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アカリ(21)
T164 B88(E) W56 H87

さてここまでの話を総括して
シロ子を解析してみると、結論は一つ。
つまりシロ子もまた
知らぬ間に次元の
狭間かなんかに巻き込まれて
私と同じく江戸中期に
タイムトラベルしてきたということである。
その証拠にシロ子は未だ
ロシア帽もコートも纏ったままだ。
「シロ子は?シロ子は寒いよね?」
「え?別にそんなでもないよ~」
「でも上衣脱がないじゃん」
「これはこういうコーデだから~。
下はただのシャツだし」
なんだかムカついてきた。
この期に及んでこのアマは何を
頓珍漢なことを言っているのか。
それとも何か脱げない事情でもあるのか。
…その時、後頭部を角材で
ぶっ叩かれたような衝撃が脳髄に走った。
何ということか。
シロ子は私と共にタイムトラベルしてきた。
そこまでは間違いないだろう。
しかしシロ子は巻き込まれたのではない。
シロ子が私を次元の狭間に巻き込んだのだ。
つまりシロ子はいわゆる
時空海賊団的な一味の一人であり
私を江戸中期の時間軸に誘致。
そして自らは素知らぬ顔で私の傍にいて
監視官として私を管理しているのだ。
新年早々
とんでもないことに巻き込まれてしまった。
一体目的は何であろうか?
私を江戸へ置き去りにして泣き喚き苦しむ
人体実験データでも取りたいのか?
それとも元の時代に帰りたいのなら
言うことを聞けなどと
機を見て脅迫を試みるつもりなのか?
どっちにしたって御免被る。
こうなったら
こっちから打って出るしかない。
幸いにしてシロ子の目論見は
実を結ぶ手前で私の千里眼の前に暴かれた。
そしてこの女が上着を脱がない理由…
コートの下に何か時空転移装置的な物を
隠しているに違いない!
驕ったなシロ子。
この私を侮った報いだ。
今度は逆に私が
お前の薄汚い面の皮ごと
そのコートを引っぺがし
秘密を露呈させて
逆に海賊たちを脅迫してやる。
私は、必ず元の時代へ帰る!
そう心に決めた私は早速攻勢に打って出た。
「え~どんなシャツなの?気になるなぁ。
私はほら、パーカーの下は
ダサダサなTシャツだよ。
もう丸首んとこダルダルだよ。
部家着のまんまで来ちゃった。
テヘペロッ☆」
私は肩を竦めて寒さを受け止めながら
ジャケットとパーカーを脱ぎ
ボロボロのTシャツ一枚になった。
タンクトップのクロ子よりは
マシかもしれないが
江戸中期の町娘と現代っ子を
耐寒性で競わせても詮無いこと。
そして私のTシャツにはSystem of a Down
というバンド名がプリントされていた。
確かに私のシステムはダウン寸前であった。
「え~ほんとに肌着じゃん。ヤバッ。
でもなんか私だけ厚着してて
恥ずかしくなってきたな~」
「そうですそうです。
我が国には和を以て尊しとすという
ありがたいお言葉がありますからね。
何事も自我に拘泥せず付和雷同して
他に追従してこそ大和魂というものですよ」
「アカリ、なんか言語が
混沌としてきてるけど大丈夫?
寒いんじゃなかったの?」
「んなこたごぜあせんよ。
あっしは歯の音が合わずとも
こうしてきちんと発音できてるでげしょ?
これが正気の証明ですよ。
アチキの気が違っていたら
こうも流暢な発音は儘ならんぞなもし。
あくまで某は公明正大でげす」
歯の根が合わないのを
食いしばって何とか喋っていると
今度は言語中枢が?み合わなくなり
私の言語は支離滅裂を極めた。
「見て見て~。このシャツJil Sanderなの。
やっぱハイブランドはワンポイントでも
ハイソな感じがいいよね~」
いつの間にかシロ子は
白T一枚になって飄然としている。
馬鹿な。時空間転移装置は?
私は何を見落としたというのか?
…ホッカイロだ。
ヤツは体中にホッカイロを
貼り付けているに違いない。
きっとクロ子も店員たちもみんなそうだ。
よってたかって
私を謀りにかかっているのだ。
思えば今日ヤケに寒いと思ったら
ホッカイロを貼ってこなかった。
私はホッカイロなしでは
冬の外場が卒塔婆になってしまう
体質なのだ。やられた。
Tシャツ一枚になった私の意識は
もはや朦朧としている。
「…そのじるさんだーも脱いで…」
口が勝手に動いていた。
「え?」
「その中に隠してるのはご明察の通り
白日の下の晒上げなのである」
「おいアカリ
ちょっと何言ってるかわからないぞ」
クロ子が余計な横やりを入れてきた。
「だまらっしゃい。こっちはもう少しで
このアマを剥けるとこなりけり」
私はカタカタと震える首を傾けながら
クロ子を睨みつけた。
すると流石のクロ子も気味が悪かったのか
見てはいけないようなものを見てしまった
というような蒼ざめた顔をして固まった。
すると突然
シロ子が両手を優しく私の肩に置いてきた。
そして言った。
「パニック障害じゃないの?
病院行かなくて大丈夫?」
瞬間、意識が反転した。
私はシロ子に掴みかかり
じるさんだーをビリビリに破り捨て
それだけでは飽き足らず
腹に手刀を突き込んで中身を抉り出した。
シロ子のハラワタは真っ黒であった。
ほーらね。
黒よりも黒い白があるってこと。
私の意識はそこで途切れた。
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