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アカリ(21)
T164 B88(E) W56 H87
――推しという名の栄養素は
恥と感激とドーナツの味がした
私にも所謂、推しというものがいる。
どせいさんではない。
霊長類の女の子である。
あるYOUTUBEの企画から
一気に有名になったその子は
思いやりの権化だった。
容姿端麗にして純粋無垢。
人一倍に不器用なれど
目の前の不幸を決して放っておけない。
例え身体が震え、涙が流れようと
他人に降りかかる理不尽には
真っ向から立ち向かう。
自分のこととなると自信がなく臆病なのに
周りのこととなると瞬時に菩薩の面が顕れ
ひたすら地母神の如く化す。
そこには自己保身も承認欲求もない。
苦しんでいる人がいたならば
己のことなど形振り構わず
いつも全力で救済に努めるのである。
共感と、献身と、抱擁。
自分にできることは全部やって
それで足りなければ
勇気を奮って迷わずその先へ足を踏み出す。
穢れなき思念。不純物なき波動の螺旋。
それは
自己犠牲と隣人愛と他者貢献の混合物。
彼女を天使と呼ばずして何と呼ぼう。
私は決してミーハーではなく
むしろ芸能人に対して、人一倍に憧れなど
持ち合わせない人種だと思っていた。
それは、音響時代
数々の芸能人に不遜な態度を
とられた経験からもきているのだろう。
楽屋裏で作られた
イメージの仮面を抜いたアイドルは
大多数がふてぶてしく
傲慢で、高飛車だった。
しかしながら、脆さと強さが
紙一重に同居する彼女は
画面越しにも関わらず、その紙の隙間に
すっかり私の心を
閉じ込めてしまったのである。
そんな稀有な性質が
世間に見つかってからというもの
彼女の人気はどんどん急上昇。
私もその人気に引き寄せられた
一人ではあるものの、彼女の笑顔が
スポットライトの形をした
ヤスリで削られていかないか
少し心配でもあった。
そう思うと、どうにも会ってみたくなった。
すると、間もなく催される
レースクイーンのサイン会に
彼女の名前があった。
急に爆発的に存在を
世に放った彼女であったが
その時は、まだメインの仕事が
レースクイーンに留まっている
過渡期の狭間だったのだ。
ここで行かねば、永遠に会えない気がした。
根が人見知りの私ではあるが
かくして腹を決め
初めての推し活に挑むことと相成った。
渋谷で開かれたサイン会場は
男性でごった返していた。
数える程度にチラホラ見える
私のような女性ファンは
場違いであるかのように浮いていた。
人生最初の推し活の
いきなりのハードルの高さに
私は気圧されていた。
できればハードルの下をどさくさに紛れて
忍者走りで潜っていきたいような心持ちで
列の中に気配を消していた。
会場はパーテーションで
三つのブースに分けられ
三人のレースクイーンが
並列にファンと交流する形であった。
推しのブースは真ん中にあった。
そしてそこのパーテーションだけ
分厚く仕切られて
推しの姿だけが遮られて見えなかった。
両脇のレースクイーンの子たちは
申し訳程度の壁しか設置されておらず
列の中からでもその姿が確認できた。
そして膨大なファンの列は
そのほとんどが中央に吸い込まれていった。
左右に行く者は
10人にひとりあればいい方であった。
芸能界においての、知名度という力の差が
容赦ない格差として眼前に展開されていた。
どうしたって愉快な顔には
なれないであろう左右の子たちは
それでも少ないファンが目の前に来ると
満面の笑みと黄色い声で
本当に嬉しそうに向き合っていた。
そんな彼女たちの姿を見ていると
私の心には変な靄がかかり
寂しい気持ちになった。
景色が寒色を帯びて見えた。
推しに会いに来たはずなのに
いつしか彼女たちを
応援したい気持ちが強くなっていた。
がんばれ。貴女たちはとても素敵だ。
長蛇の列の中で
私は自分が一体誰のファンなのか
なんだかわからない感じになっていた。
が、姿の見えない推しのブースからは
左右よりも一層
黄色い大きな声が絶えず響いていた。
途方もない人数と触れあいながらも
推しの声には一切
疲れも雑念も混じっていない。
毎回、新鮮に感激している様子が
壁越しに伝わって来た。
一時間近く
気まずさを感じながら並んでいる中で
推しのテンションだけは
全く落ちることがなかった。
一体どういう体力をしているのだろうか。
精神が体力を凌駕している?
それにしたって
精神にも体力はあるはずだ。
だとするとこれは
感情が精神をも凌駕しているのだろうか。
そんな人間が本当に存在するのだろうか。
これだけの人数を裁くのには
如何に人間愛が強い子であろうとも
どこかで定型な対応に
ならざるを得ないのが定石である。
しかし、漏れ聞こえる推しの会話の中には
ひとつたりと予定調和な文句がなかった。
微塵のおざなりもなかった。
メディアでの彼女の像が
ある程度は作られたものであることも
覚悟してきたのだが
耳には全くそんなことは
ないように聞こえた。
?アカリ?
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