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高樹(35)
T164 B80(B) W56 H84
投稿日時
天動説のプトレマイオスから一転、
季節が変わると星の光度が変わる事から
地動説を打ち出したコペルニクス、
ガリレオまでの数学と弛まぬ観察力は
叡智の結晶ではなかろうか
ニュートンの光学の基礎や微分積分、
果ては万有引力に紐付いた
プリンシピア！！
まさに天才の名を
欲しいままに発揮している
そんな偉人列伝に
胸を躍らせていた小学生の頃
親の言いつけを破って
門限の17時過ぎて帰宅し
大目玉を食らった事がある
駄菓子屋さんで財布を落とし
結局財布が見つからなかったのだ
だが更に叱られるのが嫌で
言い出せなかった
そこで1番始めに習った
おじいちゃんの電話番号を押して
受話器を握りしめ泣き泣き相談した
優しいおじいちゃんは
「お母さんに代わってくれるかい」と言い
苦虫を噛み潰したような母の顔と
だんだんと小さくなる声、
「もうお母さんも怒ってないから、
次からちゃんと17時には帰るんだよ」
と言う、この上なく頼もしい言葉に
幼いながらも「力の法則性」を感じた
怖い物知らずの女という
あらゆる可能性を秘めた幼児期である
この後、優しいおじいちゃんが
お小遣いをくれに家に来て
「いいから！いいから！」合戦の果てに
普段より多く
お小遣いを貰うまでがセットなのだ
今思えば親泣かせである
金曜日出勤します
10:00〜16:00
ご用命をお待ちしてます
投稿日時
熱っぽい視線で
長く抱きしめてくれる
その安心感、喜びに
心が解けて泣きそうになる
壊れものに触れるように、
優しく慈しむように、
まるで久しぶりに会う恋人と
再会したように
この切り取った時間だけ
一時凌ぎのフェイクでもいい
この瞬間だけ愛して欲しいと切に願う
金曜日出勤します
10:00〜16:00
ご用命をお待ちしてます
投稿日時
天才とは資質である
遺伝子配列と脳の配線が全てであり
人の場合、決して血統ではない
遺伝子の揺らぎがある以上、
鳶が鷹を生む事はあっても
天才から天才が代々受け継がれる事はない
血統の維持で天才が生まれるなら
今の世は天才だらけの筈だ
だが蓋を開けてみれば
いつまで経っても天才の割合は変わらず
出来不出来を
エジプトのヒエログリフが示すように
能力の優劣に未だ悩んでいる
サイコパスが戦時中は英雄であるように
その時代に必要とされる能力を
持たない人は「不出来」と
烙印を押されるに過ぎないのに
いつの世でも
生まれる世が世なら…と嘆くのだ
だがあえて言えば、やはり似るのだ
数字や言語に強い、フィジカルや容姿
体質など日本人が日本人の見た目な様に
そう思う程、どうにかして人工的に
天才を産み出す術は無いものか…
確率以外の方法を人は模索する
克服も根性も何もない
数値化すれば車種別の車のメーターと
大した違いはない
ただ天才は規格外というだけの話だ
問題はその規格外の作り方だ
面白いのは、生命を維持する為に
負荷をかけないよう脳に設置された
フィルターが稀に先天的、あるいは
後天的な理由で(事故や大病等)
機能しなくなる事だ
それにより文字通り「全て」を
生涯において忘れずに記憶したり
カレンダーを何十、何百年前まで遡って
タイムラグなく言えたりする
大抵は脳が損傷すると
神経回路の喪失か身体の不自由、
脳が記憶出来なくなるのだが
過去の事例では爆撃で脳の半分を失い、
他部位が補おうとした結果
才能及び人格さえ変異した例がある
人類の脳が全て解明された暁には
脳もデザインできる様になればいい
天才しか居ない世界は
どんなものか見てみたい
SFのようにシステム化し合理化するのか
生物的な回帰線を描くのか…
金曜日出勤します
10:00〜16:00
ご用命をお待ちしてます
投稿日時
週末に引いた風邪がグズつく
温んだお茶で喉を潤して
ペタペタ音を立てるサンダルで歩いた
今更ながら
無目的に生きた事に嘆息する
むら染めしたような曇り空を見上げ
しっとりした質量の空気感に
触れられそうだなどと思う
小糠雨に変わりそうな曇天の中
ほんの少し憂鬱を携えて
金曜日出勤します
10:00〜16:00
ご用命をお待ちしてます
投稿日時
友人に向かって消しゴムを投げたら
教卓にいた先生の頭に当たり
先生の食べていたスープ皿に落ちた
八方に飛び散るミネストローネ
八方塞がりで死にそうな自分
先生は黙って教室を出ると
ピシャリと扉を閉めた
しん…と教室が静まり返り
周囲の視線が刺さる
ほどなく先生は
ハンカチで手を拭きながら
教室へ戻ってきた
何事もなかったかのように食べかけの
給食を片付け、
配膳の後片付けや教室の掃除を
普段通りに指示した
静かな教育がにわかに活気づいた
そして先生は努めて普段通りに…
「ちょっと」と廊下に私を呼び出した
「ドナドナ」の作詞者
アーロン・ゼイトリンの歌が
あれほど脳内で鳴り響く日は無かった
怒りに任せて叱らず、
噛んで言い含めるように
「物は投げてはいけない」と
無表情で視線だけピッタリ合わせて
諭してくれた先生…あの時は
ありがとうございました
先生のおかげで少しだけ
コントロールが上手くなりました
外さない気持ちは大事！
火曜日出勤します
10:00〜16:00
ご用命をお待ちしてます
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