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アカリ(21)
T164 B88(E) W56 H87

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お題:異世界転生・歴史探訪・
嘘つき同士の友情・最期の晩餐
希望と空虚・臆病者・快楽に溺れる
据え膳食わぬは男の恥
正解と正しいは違う・推し活沼
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気が付くと私は、掘立小屋の中にいた。
なんか長袍に身を包んだ
荒くれ者な感じの奴らが屯っている。
何処だ此処は?集会所?
桶狭間で善照寺は燃えた。
私は今川義元に討たれ炙られ
今川焼きになったんじゃなかったのか?
「兄者、いい加減に観念しねえか」
虎のような髭を生やした骨太マッチョが
怒ったような顔をしている。
その横には、長身マッチョが
ヴィダルサスーンみたいな感じで
二尺はありそうな
サラサラな黒髭を撫でている。
「そもそも兄者は漢の高祖
劉邦の末裔だとか言ってるけどさ。
それだけじゃもう限界だって」
「言うな張飛。
それがなくなったら兄者は
ただの四十七の草鞋編みのおっさんだ」
二尺髭が割って入る。
どうやら私はまた死 ねなかった。
というか元の世界にも戻れていない。
そしてさっきから兄者兄者って
私はこいつらの長兄なのか?
「その、じゃあ僕は君たちの兄として
何をしたらいいのかね?」
目の前に詰め寄る巨漢二人を前に
恐る恐る聞いてみた。
「だから言ってるじゃねえか。
荊州に未だ誰にも仕えず勉強ばっかしてる
臥竜って奴がいるから
スカウトに行こうって」
「臥竜?隠れた逸材的な?」
「優秀にも関わらず
未だ曹操にも孫権にも下っておらん。
これは我らの好機ですぞ」
二尺髭も虎髭と意見は同じらしい。
嗚呼、なるほどね。
今度は私、劉備玄徳ですか。
脳筋みたいな連中の集まりなわけだ。
だってこんな学も身分もない
フィジカルだけのおっさんのとこに
頭良い人材が集まるわけないもん。
こんなアウトローばっか集めて。
もう義賊っていうか山賊じゃん。
アウトレイジじゃん。
ファッキンジャップくらい
わかるよバ カヤロー。違う。
ここは今ファッキンチャイナだ。
玉無し野郎のせいで宮廷がメチャクチャだ。
いや、玉はあるのか。竿がないんだった。
竿がないのを馬鹿にされ
性欲あるのにヤれもせず。
そりゃ宦官も性格歪みますわな。
そもそも竿切り落とす時点で
生存率半々みたいな話だったけ。
でも十常侍のせいで乱世乱世。
黄巾の乱れより
睾丸の乱れの方が問題ですわな。
って私はさっきから何を言っているのか。
幸い私にはちゃんと玉が二つある。
実弾も二発ある。
この虎髭と二尺髭が
かの燕人張飛と美髭公関羽だろう。
ただこの二人も脳筋には変わりないわけで
じゃあ私はやっぱり臥竜こと諸葛亮孔明に
例の三顧の礼とやらをしなきゃならんのか。
やだなぁ。あいつ絶対性格悪いもん。
大体アラフィフの私が
二十代の小僧相手に頭下げに行くって
もう行く前からキツい。
でも脳筋だらけのこの空気はもっとキツい。
「乗るしかねえって。
このビッグウェイヴに」
「兄者。ご決心なされい」
張飛と関羽に半ば無理やり諭されて
私は隆中の山道を登る羽目になった。
何故か外来語を使った張飛が
ヴの発音の時にこれみよがしに
下唇を噛んでみせる感じが
なんか凄くしんどかった。
上り坂もしんどかった。
大男三人は道中無言であった。
道はそんくらい険しかった。
これを三回もやるのか。
いや、二度と御免なんですけど。
そう思っているとボロい庵が見えてきた。
「もし。臥竜の先生はおりますかな」
玄関口で声をあげて尋ねると
茶坊主みたいなのが出て来た。
「兄は留守です」
すんごい無礼な、素っ気ない態度で
茶坊主はそう抜かした。
「ほう、では君は諸葛亮の弟の諸葛均君かね」
「え?何故私の名前を?」
私は詐術に打って出ることにした。
こんなところに三回も来てたまるか。
「私には神通力がありましてね。
その者の本性を
一瞬で見破る力があるのですよ」
「マジか兄者。すげえ」
張飛が神を見るような目で私を見ている。
許せよ弟。今お前の兄は稀代の詐欺師だ。
「兄君がわざと留守を装って
私を試そうとしていることもお見通しです。
いや私も舐められたものだね。
こんなことは私のような
仙術使いにとって児戯に等しい。
さあ、諸葛亮を出しなさい」
「無理です。兄は帰りません」
「ほほう。
まだ私を謀ろうというのかい坊主。
そもそも私は諸葛亮が
竹藪の中に隠れているのを
ここに来る前に見かけているのですよ」
「え?本当か兄者」
「ええ。バレないと思って
ニヤニヤ笑いを浮かべていましたね。
実に不快な顔でした」
これは事実だった。
私は史実をしっていたので
竹藪を注視しながら進んできたのだ。
ビンゴだった。
殴りたくなるような含み笑いだった。
思い出したら何だかムカついてきた。
「しかし、何と言われようと
とにかく兄は留守です」
「ではその兄はいつ帰ってくるのかね?」
「わかりません」
「それもそう言えと兄に言われたのかね」
「はい」
「この指示待ち人間のド餓鬼が!」
私は茶坊主こと諸葛均を殴り飛ばした。
矮躯な諸葛均は
茶の間まで吹っ飛んで行った。
「兄者!子供相手に何をなさる!」
「そうだぜ!いくらなんでも大人気ねえや!」
髭兄弟が揃って非難の声をあげた。
「うるさい!
こんな自分のないガキが増え過ぎたせいで
我が日本はすっかり骨抜きの
イヌイヌのダメダメじゃないか!」
私は怒声を張り上げた。
諸葛均は茶の間で失禁したまま動かない。
「何をいってる兄者?
にっぽん?なんだそれ?
あんた気狂いになっちまったのか?」
張飛がドン引きしている。
関羽は茶の間に上がり
諸葛均の体を検めた。
「…兄者。小僧は死んでおりますぞ」
関羽がドン引きしながら言った。
私は絶句した。
やめろ。そんな目で見るな。
私は最近の若者の
根性を叩き直してやろうと正義の鉄槌を…。
帰り道。皆、無言であった。
途中の竹藪の間から
諸葛亮が嗚咽して臥せっているのが見えた。
誰も何も言わなかった。
そして軍師を欠いてグダグダなまま
博望坡の戦いが始まった。
兄弟二人は目も合わせてくれなかった。
私はヤケクソになって
総大将の夏侯惇へ向かって単騎駆けした。
その途上、横合いから馬の嘶きが聞こえた。
次の瞬間、目の端に、
白刃が一閃するのを見た。
私は気付けば低い地べたから
倒れ伏した己の首なし胴体を見ていた。
「その手で幼きを虐る外道。
もはや、我が主にあらず」
大刀が、鈍い光を放ちながら
鮮血に曇っている。
「桃園の誓い、ここに潰えたり」
関羽は青龍偃月刀を振った。
赤が弧を描いて土に散った。
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