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(お題:飛行機と出張、信頼
私の愚行、口から出まかせ
リストラされた中年、遠距離恋愛)
?
翌日。
俺は成田からバンコク行きの
飛行機に乗った。
顔に新聞紙を載せて寝ている
小太りの中年紳士。
赤子に哺乳瓶をしゃぶらせる若い母親。
おそらくその夫であろう
隣で文庫本を捲っている青年。
杖をついてよろけながら
荷物を取ろうとしている老人。
それを甲斐甲斐しく手伝うCA。
地上から四万フィート離れた上空に
老若男女の生が横溢している。
そのことを呪う亡者がいた。俺である。
「こんな鉄塊がこんな高いところを
飛ぶ道理がおかしい。
落ちるべきだ。落ちないかな。落ちてくれ」
死神はどのくらいの
気圧に耐えられるのだろう。
今のところ飛行機の窓から
死神を見たなんて話は聞いたことがないが。
もし死神が気流に乗って
浮いてるのだとしたら
この高さだと時速二百キロくらいで
吹っ飛ばされちゃうよね。
フワフワ浮いてるどころじゃないっての。
あと、気温もさ。
あんな寒そうなボロ布一枚で
-50℃前後を耐えられるのかって話。
地獄だな。
まあ地獄から出張して来てるんだろうけど。
じゃあ平気なのかな。
だったら早く迎えに来てくれよ。
?
その願いが通じたのか
機内に突然、死神が現れた。
「騒ぐな」通路の中央に立った男が
拳銃を掲げた。
続いて客席から二人、男が立ち上がった。
更に通路奥からCAが…
喉元に銃口を押し付けられながら
ーら歩かされてきた。
通路中央、パーカー。
客席左、スカジャン。客席右、ライダース。
CAの背後、ネルシャツ。計4人。た
それぞれがラフな
しかし色は黒で統一された格好をしていた。
見た感じ、どうやら全員日本人だ。
各々が一丁づつ拳銃を携帯している。
「この飛行機はハイジャックされた」
パーカーは声を荒げるでもなく
妙に落ち着いた調子で宣言した。
逆にそれが得体の知れない恐怖を生んで
搭乗者たちを縛り付けた。
口角の位置を高く固定して
貼り付けたような笑顔を振り撒いていた
CAたちの表情が凍りついている。
殊に、銃口を突きつけられているCAなどは
口をパクパクさせながら
引きつけを起こしたように震えている。
「俺たちはこの航空会社の不正を
世界に知らせる。
悪いがその広報に立ち会ってもらう」
乗客の誰かが小さく泣いた。
スカジャンが、その嗚咽の音に反応して
素早く銃口を向けた。
一瞬にして機内に緊張が走る。
耐えきれなくなった
人質のCAが膝から崩れ落ちた。
腰が抜けたのだろうか。
「おい、立て。立てないなら他のヤツを…」
「待ってくれ」
気が付くと俺は立ち上がって
声を上げていた。
「その人を放せ。俺が人質になる」
「動くな。それ以上、動くと撃つ」
俺はその言葉を意に介さず
ネルシャツの元へ
ゆっくりと歩を進めていった。
「チッ…クソ野郎が。
日本語わかんねえの…て、あれ?お前…」
パーカーは発砲しなかった。
それどころか
訝し気にこちらへ近づいてくる。
「お前、トニー!トニーじゃないか!
生きてたのか?」
他の連中も中央通路付近に集まってきた。
「ほんとにトニーじゃないか!
嘘だろ、奇跡だ」
意味が分からない。
分からないが
とりあえずトニーというのは
こいつらの仲間らしい。
ここで、これを利用して
こいつらに取り入ることができれば
御の字だ。
俺は言った。「あいるびーばっく」
?
トニーという日系フィリピン人がいた。
空港会社の契約社員で
やはりこいつらの同僚だったらしい。
そんで俺に瓜二つだという。
そういえば俺の親父は
すしフィリピンパブが好きだった。
母親と出会う前から嵌っていた。
そしてやたら
バタくさい顔をした俺が生まれた。
これはつまり…。やめよう。
家系図にも載っていない
暗部に深入りするのは
エプシュタイン島の闇を覗くのと
同じくらい危険だ。
置いといて、トニーは真面目な男だった。
会社の言うことなら何でも聞いた。
そして死ぬほど働いた。
ある日、空港からの帰り道。
トニーが事故を起こした。
車で中央分離帯に突っ込んだのだ。
会社はこれを「私生活の事故」として処理。
だが同僚たちは知っていた。
その日のトニーが
36時間勤務だったことを。
「俺は死んだって聞いてたからよ。
このヤタケタだって、お前の弔い合戦
みたいなところが半分あったんだぜ」
「そうだよ。なんで生きてんだよ。
いや良かったけどさ。連絡ぐらいくれよ」
「もう手遅れじゃん、これ」
「いえす。あいあむじあんだーていか」
「なんだそれ。不死身ってことか?」
「そうそう」
もはやこうなったら
トニーになり切るしかない。
トニーは日本語も英語も不自由で
だが連中にはなぜか
トニーの言うことが通じた。
ならばこれは俺の得意分野だ。
自慢じゃないが俺も英語は全くできない。
そして俺は適当に喋るのが得意だ。
いやそもそも、こんな死んだような人生を
抜け殻として生きるより
トニーとか言うヤツの魂を
この身にぶち込んで
もうこの先、トニーとして生きる方が
まだ生き甲斐があるんじゃないか?
どうせ俺は五年前に死ぬべきだったんだ。
今更トニーでもスタークでも
何でもいいじゃないか。
でも待て。
そうすると俺は仕事ができない。
どころか犯罪者になってしまう。
そうだ
こんなことをしている場合じゃない。
俺は仕事をしなければならない。
?
?アカリ?
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(お題:飛行機と出張、信頼
私の愚行、口から出まかせ
リストラされた中年、遠距離恋愛)
しかし、予測していない事態が起こった。
俺の担当していた海外取引の契約が
唐突に成立したのである。
そして、その最終契約には
責任者である俺の立ち合いが必須であった。
マジかよ。なしてこげなタイミングで?
しかし、今の俺は転職したての
新人サラリーマンの身の上。
流石に入社早々
これを反故にすることはできない。
幸いにして契約には
一時間程度しかかからない。
新婚旅行に支障はない。
ただ、少し便をズラす必要がある。
早速、旅行会社に掛け合って駄々を捏ねた。
しかし、流石に
二人分の席をズラすことは難しかった。
しょうがない。
妻には予定の便で行ってもらって
一足先に英国で
寛ぐなり観光するなりしてもらおう。
数時間後には俺も追い付けるはずだ。
「新婚旅行だろ?構わず行ってこいよ」
と軽口で囃す同僚もいたが
取れる仕事の責任を
放棄するわけにはいかない。
?
「すぐ終わるよ。夜には飛ぶ」
俺は妻にそう告げた。
「無理しなくていいよ?」
妻は少し残念そうな顔をしながらも
心配げに気遣ってくれた。
「大丈夫、明日の夜にはヒースローだ」
抱きしめたいが時間がない。
「ミニャック、夕焼けすごいらしいよ」
「それは見たいな。動画送っておいてくれ」
俺は靴紐を結び終えると
妻の唇に軽くキスをした。
「少し寂しい思いをさせるけど
すぐに追いつくから。
先に英国を満喫しておいで」
妻の頭をポンポンしながら
恰好付け気味に前衛芸術的なポーズを
玄関先で決めると
彼女はいつものように破顔して
屈託のない笑顔を作った。
「いってらっしゃい。
じゃあ一足先に豪遊して待ってるからね。
早く迎えに来てね」
あいるびーばっく!
俺は勢いを付けて叫びながら
家を飛んで出た。
熱を帯びた照明が
一人ひとりに濃い影を作り
途切れることのない蝉の音響が
全力で夏を演出していた。
?
妻は朝の便でイギリスに発った。
そして
永遠にその土を踏むことはなかった。
凶報を聞いた時。通夜の時。葬儀の時。
俺は泣かなかった。泣けなかった。
涙が、流れてくれなかった。
これは芝居か?
俺はまだ舞台の上にいるのか?
全てが作り事のようで
何にもリアリティがなかった。
強いていえば、後悔していた。
何を?一緒に死 ねなかったことを。
同じ便に乗っていれば、俺一人
こんな舞台に取り残されることはなかった。
今も尚、俺の瞼からは一滴の涙も流れない。
その瞳は、虚ろに光を失ったまま
通常運転している。
?
それからの俺は、死んだように生きている。
いや
生きているだけで、もはや死んでいるのか。
俺の時間は、ハムスターの回し車のように
同じ場所をぐるぐると空回りし続けて
あの日から一刻も先に進んでいない。
ただ、会社の端末にログ インし
数字を整え、取引先に頭を下げる。
その繰り返し。
妻の死後も変わらず出社する俺を見て
ある同僚は精神科の受診を勧めてきた。
違う。
俺に必要なのは入院や薬物ではない。
俺は仕事が終われば
すぐに行くと妻に約束した。
しかし妻は随分遠くまで行ってしまった。
「後追い」という近道をすれば
妻のところまで
早馬で駆けつけることもできるだろう。
断じて俺にそんな行為は許されない。
何故なら俺には
果たすべき贖罪があるからだ。
妻よりも仕事を優先し
結果、見殺しにした。
そんな男に
自ずから死を選ぶ権利などない。
俺は仕事を続けなければならない。
「仕事が終われば向かう」。
そう約束したのだから。
故に、死が向こうから迎えに来るまで
俺は仕事を続けなければならない。
?
上司はグリーフケアを勧めてきた。
違う。
同じように苦しんでいる人が
他にも大勢いるとか
そういう問題じゃない。
俺個人の問題に
人数や他人のことなど、何の関係もない。
俺一人の罪に、他人の許しなど必要ない。
ある日、部長が俺を呼んだ。
「波佐間、タイに飛んでくれ。
通訳は向こうで手配する」
理由は、現地法人のトラブル対応。
俺は頷いた。
それ以外の機能が
すでに失われているように。
きっと部長は
毎日社内で陰気を四方にばら撒いている俺を
少しでも遠ざけたいんだろう。
もしかしたら帰って来た時
俺の席は無くなっているかもしれないな。
そしたらまた別の仕事を探せばいいさ。
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?アカリ?
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(お題:飛行機と出張、信頼
私の愚行、口から出まかせ
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ところが、逢坂命の実力は本物だった。
彼女の演技はその美貌に劣らなかった。
ルッキズムの極北にありながら
彼女は驕らなかった。怠けなかった。
恵まれた容姿に拘泥せず
人一倍の努力を己に課し
決して演技に妥協を許すことがなかった。
逢坂は僅か数ヶ月か月足らずにして
界隈でも屈指の実力派
と認められるようになった。
ひょっとしたら逢坂も
芝居そのものが恋人なのかもしれない。
そしてまた、俺と同じように
性の十字架を背負いながら
戦っているのだろうか。
俺は逢坂に勝手に親近感を覚えた。
そして俺と逢坂は
必然、共に主演を張ることが多くなった。
なんせうちの劇団の一番の売り物は
男と女の悲恋話。
ヒーローとヒロインのW主演は
必要不可欠なのだ。
人の色恋に悲憤慷慨。
人間の本質的な好物は
古代ギリシャから変わらない。
俺と逢坂命は、舞台上で幾度も恋に落ち
愛を語り合い、そして死別した。
そのどれもが、とても充実した恋愛だった。
逢坂とはプライベートでも
一緒にいて居心地が良かった。
役作りのためにデートをしたり
お互いを語り合ったり
そうしているうちに
俺と逢坂の価値観は
予想外なほどに共鳴していった。
初めての感覚だった。
俺はいつの間にか逢坂命に心惹かれていた。
それは、作り物ではなかった。
しかし、逢坂は?
彼女の方はどうなのだろうか?確かめたい。
もう新世界の神とかどうでもいい。
何がミッドナイト・ゴッド・ムーンだ。
正直、俺は限界だった。孤独だった。
下半身はもはや曠野だった。
俺はある日、逢坂を飲みに誘い
ハートに火を付ける代わりに
スピリタスを燃やし
これを一息に飲み干した。
その勢いで、己が偽りない気持ちを
逢坂に余さず打ち明けた。
唇の真ん中に焦げ目がついて
ふざけた顔になっていた。
逢坂はしばらく俺の顔を見て爆笑していた。
俺は耐えた。
緊張と恥辱で射精してしまいそうだった。
やがて、一通り笑い終えた逢坂が
目に涙を溜めながらも
真っ直ぐ俺を見て言った。
「私も全く同じ気持ちだよ」
?
俺たちは程なくして自然に同棲を始め
そして逢坂のお腹に子供ができた。
俺はその場で逢坂にプロポーズをした。
片膝をついて指輪を差し出た俺を見て
彼女はまた笑った。
そして例の如くいっぱいに涙を溜めた瞳で
愛しそうにお腹をさすり
「よろしくお願いします」。
そう言って左手を差し出した。
俺はその薬指に指輪を嵌めた。
サイズを計るのを忘れていたので
ブカブカだった。
幸いにして指輪を購入した金物屋が
サイズ直しのアフターサービスを
行ってくれたので
俺は破産申告せずに済んだが
指輪がスカった時の逢坂は
腹が捩れて、中の我が子が心配になるほど
捧腹絶倒していた。
このことは両家の笑い話として
末代まで語り継がれるであろう。
?
それから俺は逢坂家へ挨拶に行き
生まれて初めての土下座をし
ご両親にご結婚のお許しを頼んだ。
作法もわからぬまま
勢いで土下座した結果
刑務所でギャングにカマを掘られている
みたいな恰好になってしまった。
御尊父は中々口を聞いてくれなかったが
御母堂は好意的に接してくれた。
というよりずっと爆笑していた。
後で聞いた話では、御尊父も俺が帰った後で
転げ回って爆笑していたらしい。
やはり血は争えないものだ。
真っ赤になった顔を両手で覆い隠しながら
帰り道でそう思った。
次いで劇団を辞めた。
意外なほどあっさりしていた。
何の躊躇も、一切の逡巡もなかった。
俺はとっくに、芝居よりも
余程大事な恋人を見つけていたらしい。
一ヶ月後、俺は友人のツテを頼って
イベント制作会社の
サラリーマンに転職した。
我ながら節操がないというか
薄情というか
いや、これは順応性が高いというのだ。
新しい仕事には
演劇ほどの刺激も華やかさもなかったが
そんな毎日が
演劇をやっていた日々の何倍も尊く感じた。
逢坂のお腹が少し丸みを帯びてきた頃
親族だけで小さな結婚式を挙げ
俺たちは結婚した。
俺も逢坂も、結婚式に
殊更な幻想を抱いていなかったし
披露宴などしてお互いの演劇仲間が
身内ノリでサプライズ茶番を
演じ始めたりしたら堪らない。
実際、俺の演劇人生における
推測統計から導き出された
その可能性は極めて高かった。
危ない危ない。
獅子身中の虫ほど恐ろしいものはないのだ。
ともかく、こうして私と逢坂は
正式に夫妻となった。
?
結婚式には拘らなかったがしかし
妻は新婚旅行には拘った。
二人の良縁のキカッケとなった恋愛舞台
その聖地であるコーンウォールへ
是非行きたいというのである。
当然、俺は一も二もなく承諾した。
夫婦としてミナックシアターで
シェイクスピアを観劇する夜。
なんてロマンティックなんでしょう。
そんな素敵な夜が
この世にあっていいのかしら。
是非行こう。是が非でも行こう。
善は急げ。旅行するなら
妻のお腹がまだ大人しい時分に限る。
俺はすぐに旅行会社に掛け合い
なんとか駄々を捏ねて
二週間後に出立予定の
パッケージを取ることに成功した。
これを逃せば夏休み・GWの
繁忙期に入ってしまうところだ。
俺は何て賢い旦那なんだろう。
生まれる時代が違えば
かの名将スキピオ・アフリカヌスとも
互角に渡り合ったに違いない。
その時はハンニバル・バルカの仇を
俺が討とう。
俺は今は亡きカルタゴの地へ向かって
勝手にパラレルな誓いを立てた。
?
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(お題:飛行機と出張、信頼
私の愚行、口から出まかせ
リストラされた中年、遠距離恋愛)
――だから男は
今日も生きてしまっている。
?
五年前、妻が死んだ。旅行中の飛行機事故。
それ以来、俺の世界から色が消えた。
?
俺は昔、ある劇団に所属していた。
自慢じゃないが
当時の俺はめっちゃモテた。
俺はいわゆる看板役者だった。
ある日、新しい劇団員が入ってきた。
逢坂命(おうさかみこと)。
美貌の人であった。
古語で言うところの
超マブいスケであった。
入団初日から、何人もの朋友が彼女に挑み
そして散っていった。
この一文に劇団の悪いところが
全て詰まっている。
それにしても逢坂はモテた。異常にモテた。
そのせいで、しばらく劇団員たちが
猿にしか見えなかった。
しかし逢坂は
どの猿にも靡くことはなかった。
俺はというと
何のアクションも起さなかった。
その頃の俺は、芝居が恋人だったからだ。
何て言うと恰好が良いように聞こえるが
先に言ったように俺はモテた。
逢坂ほどではないが、激烈にモテていた。
それで最初のうちは何人かの女優と
付き合ってみたりしたんだが
これが全然楽しくない。
リアリティがないというか
何もかもが恋愛という
ルールの上の作り事って感じで
身が入らずクニャクニャになった。
そんなことで
俺の恋愛は長く続いた試しがない。
だが下半身の事情は別だ。
なんせ俺は空前絶後にモテた。
モテたもんだから
毎日のように女優からの
誘惑・お誘いがあった。
そのせいで俺は日々
俺の中の俺と戦い続けていた。
?
「ワンナイトくらい良いじゃないの」
「ダメだ。一回そんな味を覚えたら
お前、絶対猿化するぞ」
「猿化して何が悪い。
サイヤ人だって猿になったら
戦闘力十倍なんだぞ」
「お前の場合は悪評が十倍になるってんだ」
「なんでだよ。女遊びも芸の肥やしって
昔のエロイ人
もといエライ人も言ってたじゃないか」
「お前は上方の落語家じゃないんだ。
お前がヤリチンになったらどうなる?
女たちからの評価はダダ下がり。
具体的には『二度と近寄るな不可触民』
くらいに蔑まれることになる」
「ええ、マジで?」
「マジだ。
劇団女のネットワークを甘く見るな。
そうなるとキャスティングもされなくなる。
この界隈での出世は絶望的だ。
お前は残りの俳優人生を
棒に振ってもいいのか?」
「俺が下の棒を振ると
人生の棒も振ることになるっていうのか」
「そうだ。人生はチンコだ。
三回振ったらもうアウトと思え」
「じゃあ俺は一体どうすればいいんだ?
こんなにモテてるってのに
このモテ期を
みすみす棒に振れっていうのか?」
「棒を振ったら
そのモテ期も一瞬でなくなって
不可触民にまで堕ちるっつってんだよ」
「モテ期は棒に振っていいのに
なんで他の棒は振っちゃいけないんだよ」
「モテ期なんてものは
人生やチンコに比べりゃ
ないのと同じだからだよ」
「ご無体な。
盛りの付いた健康優良児に対して
あんまりな仕打ちじゃないか」
「待て。一回抜いてから考えてみろ。
お前には女より
ずっと信頼できる相棒がそこにいるだろう」
「そんな。
右手とお友達になれっていうのか。
寄生獣じゃないんだぞ」
「右手を使いこなせばお前は夜の神になり
その人生は月光の如く輝くだろう。
お前の右手はミギーじゃない。
いうなれば夜の神の月」
「キラじゃねぇかよ」
「俺よ、新世界の神になれ」
?
オレオレ戦役を制したのは
神の座を狙う俺だった。
俺は一発抜いて考えた。
そして決めた。
俺は新世界の神になる。
こんなところで終わってたまるか。
それからの俺は偉かった。
来る日も来る日も手淫に明け暮れた。
誘惑を感じたらば
すぐにトイレに駆け込み、これを治めた。
俺は新世界の神になる。
俺の右手は神の右手だ。
ミッドナイト・ゴッド・ムーンだ。
そう自分に言い聞かせつつ
俺は悲しかった。
俺は俺が可哀想でならなかった。
俺はこんなにモテているのに
そこいらの醜男以下の青春を送っている。
しかし仕方がない。
これは必要な犠牲なのだ。
耶蘇は十字架の重みを背負って神となった。
ならば我もまた
性なる十字架を背負ってそれに倣わん。
ザーメン。
?
まあしかし、劣情を抜きにしてみれば
舞台上の恋愛の方が
よっぽど心動くものがあるのだ。
俺には、作り事の世界の方が
性にあっているのだ。
神となった暁には、この作り事の世界を
本物と挿げ替えてやろう。
令和の山中鹿之助とは俺のことよ。
嗚呼、我に七難八苦を与えたまえ。
我が他に誰がこんな苦行を
耐え忍ぶことができようか。
はは。誰もできやしない。
愚かな猿どもめ。
どうせあの逢坂命も
日々寄る波に呑まれて溺れるに違いない。
見た目だけで演出家に気に入られて
良い役もらったってなぁ
結局はその場限りのハッタリなんだよ。
容姿しか武器のない井の中の姫君たちは
皆そうして諦めて田舎に帰っていくのさ。
又は更に枕に磨きをかけるかだ。
どっちにしろ、本質的な出世とは程遠い。
雄猿も雌猿も大した差はないわね。
ホホホ。
?
?アカリ?
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ああ、もうババア、ハンコ押しちゃったよ。
どうしよ。マジで万事休す。
何か、何かないか…。
「…ん?あれ?ここの箇所
すみません
ちょっと訂正お願いしたいんですが…
どうも、手持ちのボールペンが…」
「はい?どうしました?」
「いえ、ボールペンのインクが
切れてしまったようでして…
なにせ急いで出てきて
持ち合わせがこの一本しかなくて…」
「ああ、はいはい。ボールペンですか。
確か寝室に…ちょっと待っててくださいね」
…ボールペン冷蔵庫の脇にないんかい!
…はぁ。とはいえ助かった。
何という僥倖。
やはり奇人に奇策あり。されど隙また多し。
というのは俺がたった今
即席で拵えた故事成語もどきであるが
こういうのMCバトルで言ったら
出典不明でも湧くかなぁ。
って、そんなことを言ってる場合じゃない。
暴力抜きのヒップホップなんて
クソ喰らえだ。ノーモア非暴力。
そんなことを思いながらも
俺の手はオートで
カードをすり替える動きをしていた。
?
「それじゃあ
どうもお手数おかけしました。
進捗は追って
こちらからご連絡いたしますので」
「はいはい。よろしくお願いしますね。
しかし物騒な世の中になりましたね。
どこで何が悪用されるかわからないわ」
まさに目の前で
おそらくあなたの人生一の
悪用がなされようとしています。
そう心で呟いて、俺はババア宅を去った。
?
公園のトイレで銀行員の扮装を解いて
その服を手持ちの鞄に突っ込んだ。
予め下に来ていたユニクロのスウェットと
ジーパン上下になった俺は
その足でダシコとの
待ち合わせ場所に向かった。
何でもそのダシコは
広告代理店のサラリーマンらしい。
なんだってそんな正業の人間が
ダシコなんかやるんだ?
むず痒い感情が心中に起こった。
それは約束のコンビニ前に着いてからも
収まらなかった。
男は浅野谷と名乗った。
神田の老舗蕎麦屋みたいな名前しやがって。
ムカつく。
なんでだ?
何で俺は初対面のこの男に
ムカついているんだ?
よくわからんが
思えば出かけに西澤から
この男のことを聞いてから
俺はずっとこいつに
ムカつき続けている気がする。
「このカードでそこのATMから
残高全額引き出しておいてくれ」
俺はそう言って浅野谷にカードを手渡した。
それからそのまま反対側の出口へ向かい
浅野谷をほったらかして
西澤の雑居ビルに直帰した。
?
「しくじった」
「ああ。聞いたよ。
彼、今頃
頑張って走って逃げてるんじゃないかな」
「地獄へ向かってか?」
「まあ、どうしたってそうなるね。
しかし珍しいな。
相川くんが失敗するなんて」
「ダシコの罪が
こっちまで波及してきたんだよ」
「君がいつも言ってるやつ?
無知は罪だって。
でもその罪を被るのは
そいつのみとも言ってなかった?」
「ああ。だからあいつのは
罪じゃなくて罰だな」
「誰からの?」
俺からの。と言おうとして止めた。
浅野谷が失敗するのは必然だった。
何故なら、俺はババアの家で
カードをすり替えなかった。
つまり、あいつに渡したカードは替え玉。
100パーセント監獄行きの片道切符だった。
「西澤。前にお前
安全圏にいる温い自分なんて
罰を受けるべきだ。
みたいなこと言ってなかったか?」
「ん?そんなこと言ってた俺?
…まあ俺の言いそうなことではあるような
ないような」
「そんで俺なんてさ
罰を受ける前提で生きてるわけよ。
俺は近い将来、兄貴を⚫︎すわけだからな」
「ああ、それやっぱ本気なんだ。
止めないけどさ。意味なく怖いから」
「だから俺は思うんだ。
あいつが被ったのは罪じゃないって」
「罪じゃないなら何なのさ」
「まともな人間の分際で
こっちの世界に足を突っ込んだ。
その天罰かな」
?
言って相川はソファに仰向けに寝転がった。
真昼間でも暗く沈黙している
蛍光灯の錆びた色が
瞼の裏に包まれて消えた。
?
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「カードの再発行のため、こちらの書類に
口座番号の記載をお願いします」
「ああ、はい。ここに書けばいいのね」
今のところカケコは成功している。
そして俺がここにいる時点で
通報もされていない。
もしここでバレても
即トンズラすれば足がつくことはまずない。
イージーゲームだ。
「ああ、それから口座番号の最期の4桁。
そこは暗証番号記入でお願いします」
「え?そうなの?」
「再発行手続きの上で
必要な確認事項ですので」
「ああ、そうなの。はいはい」
クリア。この手口は意外に優秀だ。
最初は俺も、そんなにホイホイ暗証番号を
漏らす馬鹿がいるものかと訝った。
ところが蓋を開けてみれば
今のところ打率10割である。
人間ってのは、ルールの前に盲目になる。
こういう規約なので。
こういうルールなので。
そう聞いた瞬間に
自分の頭で考えるのを辞めてしまう。
目の前にレールが敷かれれば
とりあえずそこから
はみ出ないことが目的になる。
何時何処で誰が敷いた
レールかもよくわからないまま。
社会全体がそうだ。
ましてや、レールから外れずに
安穏と生きてきた
この手の富裕層ジジババは
手続きというルールを目の前に翳された瞬間
従順な子羊に成り下がる。
あとは俺が犬のように
その羊を奈落へと追い立てればいい。
でもそしたら
羊飼いは西澤ってことになるのか。
ムカつくな。まあいい。
せいぜい飼い犬に手を噛まれないよう
上手く笛を吹いてもらおうじゃないの。
…と、ババアが記入を終えたようだ。
「うん…うん…はい。
ご確認させていただきました。
ではその、カードの方は後日発行し
郵送させていただきますので
最期に、ここに
ご捺印をお願いできますか?」
「ああ、ええ。そこの冷蔵庫に…」
?
…冷蔵庫!?
ヤバい。思わぬピンチ。
大体のジジババは
ハンコを別の部屋まで取りに行く。
少なくとも今まで応接室や居間に
ハンコを置いていた輩などいなかった。
しかしてこのババアは、あろうことか
すぐ後ろの冷蔵庫脇の小物入れに
このハンコ大国ニッポンにおいて
最重要機密道具である
ハンコを入れているのである。
なんたる不用心か。
いや、この場合においてはその例外的奇行が
豈図らず俺の急所にヒットしているのだが。
ううむ。どうしよう。
困った。マジで困った。
目の前に獲物のカードがあるにも関わらず
これではすり替えることができない。
何とかしてババアに隙を作らせなければ。
「あ、ハンコそんなところに
置かれてるんですか。不用心ですよ。
気を付けてくださいね」
「ええ、確かに言われてみれば…
あれ、どこにいったかな?」
「ひょっとしてアレじゃないですか?
用心を見越して
ご主人が別のお部屋に持っていったとか…」
「いえ、ありました。
ちょっと奥の方に入ってたものですから」
「ああ、はい。そうですか」
ババアはそれから間を置かず
ハンコを持って席に着いた。
「あ~…ではこちらの方にご捺印を…
朱肉ってございますか?」
「え?そちらで
ご準備してくださってないんですか?」
「申し訳ございません。
なにせ突然の急命で
取る物も取り敢えず…」
「ああ、そうでしたか。
はいはい、待ってくださいね。
朱肉も冷蔵庫のところに…」
…チッ!俺は内心で舌打ちした。
まあそりゃそうか。
ハンコと朱肉を
別々の場所に置く方がどうかしている。
?
?アカリ?
?
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投稿日時

兄貴はハッパのプランターを
勝手に俺の家で栽培して捕まった。
俺が女の家を泊まり歩いている
最中のことだった。
俺は全く事情を知らなかったが
突然、信号待ちの車をノックされ
そのまま逮捕された。
しかし俺は取り調べで何も吐かなかった。
大麻取締法違反。
その栽培ともなると罪は重い。
そこに暴対法が乗っかると凄い刑期になる。
幸いにして兄貴は組での重労働に
嫌気が差して逃走。
名簿からは除籍されていたが
それでも7~8年は出てこれない。
俺は少しでも兄貴の刑を軽くするために
塀の中から色々と鳩を飛ばした。
ある日、担当刑事が言った。
「お前の兄貴は
全部お前がやったって吐いてるぞ」
俺は我が耳を疑った。
しかし目の前には供述資料がある。
兄貴は俺を裏切った。
俺は兄貴を庇うのを辞めた。
全て本当のことを話した。
だが実際、警察は最初から裏が取れていた。
俺がやっていないこともわかっていた。
全ては兄貴を完全に堕とすため。
そのために俺の証言が必要だった。
俺はまんまと警察の思い通りに
動いてやったというわけだ。
だがそんなことはどうでもよかった。
間もなくして出所した後も
俺は兄貴のことが許せなかった。
あと6年後…7年後…
出て来たその時に、必ず⚫︎す。
ケジメも何もなしに
不義理を踏み倒したままの兄貴には
どうせ組からの追手がかかるだろう。
その前に⚫︎す。そう決めた。
?
「6割だ」
「へ?」
西澤が間の抜けたような声を出す。
「リスクを背負うのは俺だ。
最低でも6割じゃなきゃ納得しない」
「いやいや、流石にそれは横柄でしょうよ」
「だったら土下座しろ」
「…え?なんで?」
「さっきのお前の発言を俺は許さない。
撤回もさせない。帳消しにしたいなら6割。
それが嫌なら土下座して俺の靴を舐めろ」
「あ~…いやはや、参ったね」
西澤は困ったように頭を掻いて
再びガラス管を炙った。
それからまた大きく仰向けに
紫煙を吐き出した。
「わかった。わかった。わかりましたよ。
全く口は災いの元だね」
「自分の商売道具を悪く言うなよ」
俺は部屋に入って
初めてリラックスした調子で表情を緩めた。
「自分で言うのもなんだが
俺は完璧主義だ。
プレイヤーとしての仕事は
完遂すると約束するよ」
「そりゃ頼もしいことで」
西澤は弛緩したような口調でそういうと
元のようにテレビに向きなおった。
「お前、そんなに鬼平犯科帳好きなの?」
「いや、嫌いだよ。正義の顔をした暴力。
全く嫌になるね」
「じゃあ何で見るんだよ」
「俺さ、捕まった事ないんだよね」
「そうなのか」
「そうだよ。
マエがないから海外でトバシ作って
仕入れたりしやすいわけ。
でも相川くんが言うみたいにさ
やっぱ安全圏にいて、労力もリスクも
テレアポと変わんないようなことやって
それでブラックの世界にいる自分って
やっぱなんか温いなぁ
とか思ったりするわけ」
「まあ、そりゃあ、うん。そうかもな」
「でもさ、これ見てると
俺みたいな温い奴が
容赦なく鬼平に捕まんの。
ざまあねぇなぁって。
ひょっとしてこれ、俺の代わりに
捕まってくれてんのかもなぁって。
そんでいつか俺も、公金で
悪党狩ってるだけの公安ヤクザに捕まって
ざまあねぇことになったら
少しはこいつらの
気持ちがわかんのかなぁって」
「ふ~ん。
でもお前みたいな温い奴がいないと
仕入れ役がいなくなって困るんだからさ。
結局は適材適所だよ。
そりゃ
お前は良いご身分で羨ましいけどな。
世の中の役回りなんてくじ運だから。
仕方ないよな」
「あらお優しい。いや嫌味か。
しかしムカつくよな、鬼平犯科帳」
「俺は二課刑班課長の方がムカつくけどな」
「うまいこと言うね。
相川くん、MCバトルとか出てみたら?
向いてるかもよ」
「手出していいなら考えとくよ」
?
あれから西澤の仕事を20回以上受けたが
今のところ一度も失敗はない。
何せ相手は世間ずれした年寄りだ。
世の中のことなどまるでわかっていない。
馬鹿な家出少女と同じだ。
彼女たちはカップ麺1個の報酬で
体を売られる。
それがとても理不尽なことだとは考えない。
何故なら何が理不尽かを知らないから。
「無知は罪」というが
その罪を被るのは、そいつのみだ。
だから俺的には
どんどん無知の罪が増えてくれると助かる。
みんなで広げよう白痴の輪。
それはとてもとても綺麗な白に違いない。
?
?アカリ?
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投稿日時

罰だけは届けに行く。
?
「芋蔓銀行から参りました。受口と申します」
言いながらババアに名刺を手渡す。
「あの、何が原因かは芋蔓銀行さんの方で
まだわかっていないのですか?」
胡乱な目つきでババアが問い返してきた。
なんだか訝しんでいるような口調だ。
こっちのセキュリティに問題が
あるんじゃないかと言いたいんだろう。
どうせ普段から迂闊に個人情報を
ホイホイあちこちに書き込んでいるくせに
太々しいババアだ。
そうやって被害者ヅラして責任転嫁しながら
生きてきたんだろう。
こんな高級住宅地でふんぞり返ってるような
ジジババどもは皆そうだ。
十分前のこともろくに覚えてないくせに
何かあると何でもかんでも
周りのせいにしやがる。嗚呼、ヤダヤダ。
こういう老害にはなりたくないね。
「現在調査中でございます。
被害拡大を未然に防ぐため
取り急ぎ伺いました。
とりあえずこちらの方からご確認を…」
俺は早口でそう言うと、早速
カードの再発行手続きに取り掛かった。
?
「当銀行の鴨川様名義のカードから
不正な引き落としが確認されました。
今、担当のものを向かわせますので
早急にカードの再発行手続きを
よろしくお願いします」
西澤がトバシの携帯で
モシモシしたのが15分前。
まともな人間ならこの時点で相手にしない。
知らない携帯番号に
出るなんてことをまずしない。
だが、このババアは出た。
この時点で、こいつが世間並みの判断力も
欠いている馬鹿だということがわかる。
そして西澤の話を鵜呑みにして
半ばパニックになったババアは
しばらく思考停止
真っ先に口座を確認することもしない。
そこでババアが冷静さを取り戻す前に
俺が訪問する。
そのギリギリ怪しまれない
インターバルが15分。10分だと早過ぎる。
これは現場経験で身に着けた勘だ。
?
「まあ、口座を確認されたところで
不正アクセスのお引き落としに関しては
こちらで処理しておいた~
とでも言っときゃ問題ないよ」
去年、雑居ビルのワンルームで
初めて会った西澤の眼は
真っ赤に充血していた。
カーテンを締め切った部屋には
ソファー、長テーブル、丸椅子
液晶テレビ、パソコンデスク
トバシの携帯、カップ麺の段ボールなんかが
雑多に配置されていて、纏まりがなかった。
「口座確認からの即通報
ってケースもあるだろう」
「相川くんは心配性だなぁ」
西澤は真っ赤に充血した目を
テレビに向けている。
「ちょっとでもヤバい匂いしたら
トンズラすりゃいいだけじゃん」
「俺は走るのが苦手なんだよ。
地に足がついてないからな」
「うまいこと言うね」
西澤は画面から目を離さず
ガラス管に火を当てた。
水がぼこ、と鳴った。
甘い匂いが部屋に広がる。
なんだかムカついてきた。
「取り分は?
草吸って電話してるだけのヤツが
多く貰う道理はないぞ」
「相川くんさぁ、勘違いするなよ。
案件も替え玉もトバシも
全部こっちが用意してんだよ。
相川くんは全部お膳立てして貰った上で
指示通り動くだけ。立ち位置わかってる?」
言いながら西澤は
天井に紫煙を大きく吹きかけた。
西澤の言い分は最もだった。
俺はそういう細々したことが嫌いだ。
片耳の形が変わるまで
受話器を離さないなんて御免だし
足元を見てくる板屋に頭を下げながら
トントン以上の条件で
替え玉を作らせる話術もない。
だが俺は知っていた。
西澤のもう一つのシノギである援デリ。
そこの女がほとんど
外国人少女であることを。
「どうだろうな。
少なくとも俺はロリペド野郎に
頭を下げることは絶対にしない」
「なんだと?」
西澤が初めて赤目をこちらに向けた。
韓流アイドルのなりそこないのような
中途半端に整った顔に、覇気のない無表情。
不愉快な面構えだった。
「お前がトバシ作りに行く口実で
タイで滅茶苦茶やってんのは
聞いて知ってんだよ。
んでそこで買い叩いた未成年使って
富裕層に売り飛ばして
自分も商品に手つけてお楽しみか。
いいご身分だよな。反吐が出る」
「相川くん、仕事しにきたの?
それとも喧嘩売りに来たの?」
西澤の眉間に八の字が浮かんだ。
修羅場を潜ったことのない浅い溝。
「元泥鰌会の不良
だかなんだか知らねえけどな。
兄貴分に裏切られて組抜けて
最近娑婆に出て来たばっかの影戻りがよ。
仕事振って貰えるだけでも
ありがたいと思えや」
「今なんつった?」
殺意が、彼方の塀に常に向けられている
殺意が目の前に溢れた。
「あ、ヤバごめん。言い過ぎた」
西澤がしまった
というような顔をして見せた。
「次に兄貴の話をしたら⚫︎す」
冗談ではなかった。本気だった。
?アカリ?
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そして次の日。午後3時。
浅野谷は仕事用のスーツを着て
小都会のコンビニ前にいた。
相手は余程の金持ちということで
きっと高級ブランドショップの
近くかなんかで落ち合うのだろうと
高を括っていたのだが、さにあらず。
しかし、何故にこんな
陳腐な場所を指定してきたのか。
「上級国民の方々は
市井で目立つのを嫌います。
だから市井に溶け込んで
普段ご自分たちが絶対にお召にならない
一般国民の生活物資を大いに買い漁って
その感慨を味わってみたい。
なんて物好きな方も多いんです」
ははあ、なるほど。
ではその金持ちは、このコンビニごと
買い占めるつもりかしらん。
その場合
俺は何を手伝ったらいいのだろうか。
商品説明?荷物持ち?
…そんな思弁に耽っていると
向こうから、上下ユニクロのような
ラフな格好をした男が
駆け足でこっちに向かってきた。
男は受口と名乗った。
何でも市井に溶け込むために
こんな安っぽい恰好をしているのだと言う。
なるほど異常な金持ちともなると
こんな買い物一つするにしても
一々何かと大変な手順を
踏まなければならないのか。
ひょっとしたらこの人たちの魂は
俺たちのそれより
不自由なのではなかろうか。
刹那的異文化コミュニケーションの中
浅野谷は受口に対して
ちょっとした同情を勝手に覚えた。
「じゃあ俺は店内の商品を
ちょっと物色してるから
このカードでそこのATMから
残高全額引き出しておいてくれ。
なに、ちょうど
要らなくなった口座なんでね。
結構お金が嵩張るかもしれないから
紙袋かなんかに入れて纏めたら
俺に渡しに来てくれ」
「ええ?
ホントに全額出しちゃっていいんですか?」
「ああ全額だ。早くしてくれ。
こっちも時間が惜しいんでね」
そういうと受口は店の死角に消えていった。
仕方がないので、浅野谷は言われた通りに
キャッシュカードをATMに突っ込んだ。
「このカードはお取り扱いできません」。
冷たく突き放すように
そんな一文が表示された。
どういうことだ?
受口がカードを間違えたんだろうか。
とりあえず受口を探そう。いない。
外は?いない。
あれ?どゆこと?
おーい、受口さーん。
?
それからしばらく探しても
受口は見つからなかった。
急用でもできたのか?
それにしたってカードを置いていくなんて
いくら上級国民とはいえ
迂闊過ぎやしないか?
というかこれ、金はどうなるんだ?金は?
そう思って心配になった浅野谷は
急ぎ焦って架田に電話した。
「はいはい」
「あ、架田さんですか?
受口さんがいなくなっちゃったんですけど」
「ああ、それね。
カードが使えなくなったのは
被害者が勘付いて通報したからだよ」
「へ?」
「だから被害届だされるまでの
スピード勝負なんだよ。
受口は、成功した時に、あんたが金を
持ち逃げしないように見張ってた。
だからカードが使用できませんって
表示を確認した時点でとっくに撤退してる。
今、警察がATMからの情報で
そっちに向かってるから
あんたは…
とりあえず頑張って逃げてみたら?」
浅野谷の頭の中で
架田の言葉がグルグル回っていた。
え?なにこれ?どういうこと?
一個も意味わかんなかったんですけど。
「え~と
とりあえず逃げればいいんですか?」
「うん。まあマスクもしないで
ATMのカメラにばっちし映ってるから
ぶっちゃけ無駄なんだけどね。
あ、知ってる?
ATMのカメラって
赤外線で全部透けて見えるんだぜ。
だから普通のマスクじゃ
付けても付けなくても一緒。酷い話だよな。
乳首まで透けて見えるんだぜ?
人権侵害もいいとこだよ」
「ええと、じゃあ逃げなくていいんですか?」
「どっちでもいいよ。
大体こういうの引き受ける奴って
馬鹿な大学生とか
シャブ中が相場なんだけどね。
あんたみたいに
正業やってる人間は珍しいよ。
こっちは捨て駒で使うだけだから
別に誰でもいいんだけど」
「そうですか。
それにしても架田さんは
なんで用済みの僕と
こんなにお喋りしてるんですか?」
「そりゃ案件が潰れて暇になったからだよ。
あんたも暇なら逃げたら?
そんでどっかで顔変えれば
もしかしたらもしかするかもよ」
「そうでしょうか」
「そうだよ。走れフォレストガンプ」
最期まで飄々とした調子で話していた架田は
そういって電話を切った。
?
気が付くと浅野谷は走っていた。
何処へ向かってかはわからない。
何かから逃げるために走っていた。
一寸先すら見えない
不条理の霧の中を走っていた。
理不尽が透明な壁となって
行く先に等間隔に立ち塞がっていた。
浅野谷は走り続けた。
走りながら透明な壁を
ぶつかりながら叩き割っていった。
壁を一つ割る度に破片が体に刺さって
刺さったところから
血の代わりに、思考そのものが
流れ出ていくような感じがした。
それは得も言えぬ恍惚感を生んだ。
壁を割る度に、浅野谷の頭の中は
どんどん白くなっていった。
浅野谷は走り続けた。
壁を割り続け、体中が破片だらけになった。
頭の中も真っ白になった。
やがて肉が見えない程に
破片が体を埋め尽くした。
すると、白一色の頭の中が突然
絶頂に達したかの如く
スパークして弾けた。
と同時に、身体全体の筋肉が膨張し
突き刺さっていた破片を跳ね返し
辺り一帯へ四散させた。
破片は道行く通行人たちに突き刺さって
人々はあまりの痛みにその場に倒れ伏し
転げ回り、のた打ち回った。
対して浅野谷の方は
破片によって空いた穴から
一斉に空気のようなものが
抜け出し始めていた。
その噴射により
浅野谷は遥か天空の青へ
吸い込まれるようにして消えた。
雲を突き破って高みに到達した浅野谷は
こんだ地平と平行になり
零式艦上戦闘機のように
空を切り裂きながら大気圏を疾駆した。
太平洋を渡り、アメリカ大陸を
横断しつつあった浅野谷はしかし
ドミニカ共和国辺りでガス欠となり
中身を失った体は皮だけのフニャフニャ。
シチューの素を入れ忘れたシチューのような
グダグダな存在となってしばらく滑空を続け
バミューダトライアングルに
差し掛かったところで謎の渦に巻き込まれ
そのまま虚数空間の彼方に消えた。
?
浅野谷の行方は誰も知らない。
?
目が覚めて、飛び起きた。
全身が汗でびっしょりだ。
嗚呼、なんだ夢か。
それにしてもなんたる夢か。
縁起でもない。
「28番、何起きてんの。早く寝て」
柵の向こうから
感情の籠らない不愛想な声が飛んできた。
「あ、はい。すみません」
浅野谷は再び
煎餅布団に包まって身を小さくした。
ベトついた汗が不愉快に体を冷やしていく。
浅野谷はその冷たさに身を委ねて静止した。
夜も眩しく雑居房を照らす蛍光灯の光が
いつまでも瞼の裏から去ってくれなかった。
?
?アカリ?
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区別がつかなくなった午後三時。?
?
真昼の都会の繁華街を
浅野は必死で走っていた。
今にも後ろから
パトカーが追いかけてくるかもしれない。
横合いから警官が躍り出てきて
取り押さえられるかもしれない。
しがないサラリーマンの浅野にとって
それは現実感の全くない悪夢だった。
普段から営業で外回りをしているとはいえ
その移動のほとんどは車である。
浅野は決して日頃から
大地に親しんでいる類の人間ではなかった。
地面を蹴る毎に、全身に慣れない反動が
ダメージとして返ってくる。
肺臓へ送り込む空気の吸引が追い付かない。
頼りない下半身が
上半身の重みに耐えきれず
重心をグラグラと揺らす。
咄嗟の判断でラマーズ法を試みるも
今度は横っ腹に激痛が走り始めた。
汗が止まらない。
頭のてっぺんから汗が下に下に垂れてくる。
もはやこれが冷や汗・脂汗・運動汗の
どれなのか、区別もつかない。
浅野は己の運動不足を嘆いた。
そしてこんなことになってしまった
己の浅慮を何よりも厭悪した。
?
浅野にはどうしても金が必要だった。
元カノが癇癪を起こして無茶苦茶にした
家のリフォーム代、約20万円。
突発的な傷心旅行に散財した金
約15万円。
その後ヤケになって入った
キャバクラの会計、25万円。
ただの失恋の傷が、気付けば
どう工面しても返せないほどに
膿んで膨れ上がっていた。
なんであそこで
ドンペリなんて入れてしまったのか。
それは、あのキャバ嬢に
元カノの面影を感じたからよ。
ルルル。男は船。女は港。
ただし、船が港に着くまで
無事かどうかなんてわかんないけどね。
はは。おもろ。
浅野は限界だった。
?
そんなある日
閑寂の耳鳴りがする我が家で一人
浅野は求人情報の
フリーペーパーを捲っていた。
何か腹案があったわけではない。
単なる現実逃避である。
浅野は、もし自分が広告代理店に勤めず
焼き肉屋の兄ちゃんとして
溌溂と働いていたならば
そもそも二八の男などと謗られる事もなく
こんな事態にも
陥っていなかったのではなかろうか。
そんなパラレルワールドを空想しては
溜息をついていた。
頭の中に黒雲が蠢いていて
今にも降り出しそうだった。
もし降り出してしまえば
その驟雨は瞼から流れ出るだろう。
その時は思いっきり嗚咽してやろう。
号泣して叫び回ってやろう。
そしたら神様も見るに見かねて
俺の元にドラえもんを
送ったりしてくれないかなぁ。
しかし現実的に考えれば
ここで泣き叫んだ場合
訪ねてくるのはタンクトップに
トライバル刺青の角刈りマッチョに違いなく
浅野は涙を捨てた。
すると潤んだ瞳にぼやけた
「急募」という文字が浮かんできた。
滲んで見えるその文字は
今まさに世間の荒波に呑まれ、溺れつつある
自らのSOSのようにも感じた。
「簡単なおつかい業務」
「指示通りに動くだけ」
「詳細はDM、又はお電話にて」。
ざっと目を通して浅野は呆れた。
呆れ果てた。嘆かわしいことだ。
今時こんなあからさまな詐欺の手口に
引っかかる阿呆がおるのだろうか。
しかしその中に気になる一節を見つけた。
見つけてしまった。「即日5万円~」。
浅野はすぐさま電話をかけた。
?
電話口に出た担当は架田という男だった。
何でも架田は上級国民に対しての
雑務全般を代行するサービス
というのを行っているらしく
今回はそのクライアントから突然
明日の買い物に付き合うよう依頼があり
急なことで人手が足りず
バイトを探していたのだという。
「ホントに買い物に付き合う
だけでいいんですか?」
「ええ。直接クライアント様と
現地で合流してください。
後はクライアント様から
買い物の指示がありますから
それに従ってください。
拘束時間は一時間もないと思います」
「え?一時間で五万円貰えるんですか?」
「上級国民の方々は忙しいご身分ですから。
ただ、買い物の大きさによっては
五万と言わず十万、二十万
という場合もありますよ」
「一時間、買い物に付き合うだけで
そんなに貰えるんですか?」
「はい。上級国民の方々にとっては
金より時間なんです。
我が社のクライアントは
一時間で何百万と
稼ぐような方々ばかりですから」
浅野は上級国民の豪快さに嘆息した。
同時にカースト制度並みに
不平等な世の中を憎んだ。
今からでもマルキシズムに走って
ネオ全共闘でも旗揚げしてやろうかしら。
いやそんなことより金だ。
金金金金金。
元気があれば何でもできる。
しかし金がなければ元気もない。
この道を行けばどうなることか。
危ぶむなかれ。危ぶめば銭はなし。
迷わずいけよ。信州には行くな。馬鹿野郎。
浅野の心の中に
ボンバイエが響き渡っていた。
?
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