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アカリ(21)
T164 B88(E) W56 H87

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お題:異世界転生・歴史探訪
嘘つき同士の友情・最期の晩餐
希望と空虚・臆病者・快楽に溺れる
据え膳食わぬは男の恥
正解と正しいは違う・推し活沼
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「…ありのままを画布に顕すのが
画家の仕事だ。
君はそれを利用して
有名になってくれればよかった」
ボコボコに腫れた顔で鼻血を垂らしながら
絵守は呟くようにそう言った。
「なんだと?僕を刑務所送りにしておいて」
「君の拳は効いたよ。
でも君の文学には刺激が足りない。
裁判や刑務所での生活。
文人にとってこれほど垂涎な題材はない。
それに、その経験を経た君の筆は
痛み苦しみを経て
覚醒するだろうと期待した。
それでわざわざ私財の大半を投入してまで
あんな茶番な裁判を拵えた。
でも君は出獄後に何もしなかった。
一冊の本も執筆しなかった。
僕は君がそんな
残念な男だとは思わなかった。
実に失望したよ」
怒りが理性を塗り潰していく感覚が
体中に広がる。
飛び掛かろうとするが
陰キャ軍団数人に取り押さえられた痩躯に
これを振りほどけるほどの膂力もなかった。
クソ。
どうやら私は、ここ一番で
最悪の体躯を引いてしまったらしい。
「戯言を抜かすな。所詮は全部
お前の私的感情による仕返しだろうが」
「嗚呼、そうだよ。それは否定しない。
君に殴られた勢いで
後頭部を床に強か打ち付けたせいで
僕はくも膜下出血になったんだ。
趣味のクンクメールも
もうできなくなった。
次の月には憧れの
ムエタイレジェンド・センチャイ選手との
試合が決まっていたのに。
ドクターストップさ。
嗚呼、夢が壊れました。
君にその夢の穴埋めができるかい?
できやしない。
今だって、この身体じゃなきゃ
脳の血種が破裂してお陀仏だったよ」
「だったら今ここで
僕が君の相手になってやる。
織田信長、劉備玄徳、ジャンヌダルク。
数多の英雄の伝説を打ち砕き
灰燼に帰してきたこの拳
そのムエタイレジェンドの
おっさんの拳とどっちが重いか。
その身で確かめてみろ」
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「…なるほど君も僕と同じか」
絵守が鼻血を服の袖で拭いながら
ゆっくりと立ち上がった。
「なんだと?どういうことだ」
絵守の目に全てを察したような
なんか大悟したみたいな光が宿っている。
ムカつく。
なんだ物語のキーパーソン
みたいな面しやがって。
相変わらず鼻につくすかしっぺ野郎だ。
「僕も色んな歴史を破壊してきたよ。
気付いたら僕は
アレクサンドロス大王になってた。
だがグラニコス河畔で
傭兵隊長メムノンにすら敵わず敗走し
マケドニアは滅びた。
フリードリヒ大王になっては
三人の女帝にボコボコにされて
プロイセンを陥落させた。
閻魔大王になっては
地獄に来たフリーザに瞬殺された。
僕なりに全身全霊を賭してやった結果が
悉く英雄たちの顔に泥を塗る有様さ。
自分は凡人だと
つくづく思い知らされたよ」
なんということか。
絵守も私と同じ境遇
どころか絵守はきちんと目の前の問題から
逃げずに戦ってきたと言う。
それに絵守は何故か
大王にばかり転生している。
神はこんなところでも
絶妙に嫌な依怙贔屓をしている。
なんだか益々神のことが嫌いになりそうだ。
まあしかし俺のやってきたことを
鑑みればそりゃ納得なんだけどさ。
でもサイコロは振ってみないと
どんな目が出るかわからないじゃない。
そこんとこどうお考えなんですかねぇ。
ねぇ神様よ。
なんて天に向かって唾を吐いていると
絵守が話の流れでとんでもない問いを
私に投げかけてきた。
「君もそうなんだろう?
懸命にやっても
英雄のように、そう簡単に
運命は変えられなかったんだろう?」
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急な精神的奇襲に私は周章狼狽した。
しかしここで取り乱すわけにはいかない。
しかしながら考えれば必ずや取り乱す。
というわけで私は考えることを放棄して
喋ることのこれ一切を
オートマティックな口先に委ねた。
「ええ?嗚呼、そりゃもう大変だったよ。
信長の時は秀吉が今川に寝返って捕らえられ
劉備の時は諸葛亮と関羽の喧嘩を
仲裁しようとして叩き斬られ
ジャンヌ・ダルクの時は
色気づいたシャルルに犯されて
神の声が聞こえなくなった。
英雄と称えられた
偉人の本性がこうも浅ましいとはね。
今生の時分に君にやられたことよりも
よっぽど酷い裏切りの連続さ。
ぼかぁもう
いよいよ人が信じられなくなりそうだよ」
私は戦慄していた。
何がって、己のこの
悪魔のような性根の腐り様にである。
絵守は、目を見ればわかる。
奴は本当に一生懸命、運命に抗おうと
英雄たらんとして勇気を振り絞って
震える足を奮い立たせて戦った。
負けても、負けても、諦めなかった。
それをば私ときたら何か。
最初の最初から鬱を口実に諦めから入り
ただただ怠惰と淫蕩に耽り何もしなかった。
その癖、あろうことかその上から重ねて
尊き英雄に汚名を着せて己が卑劣を誤魔化し
首を垂れるべき偉人に
罪を擦り付け続けている。
しかもその魂胆は偏に
絵守なんかに見下げられてたくないという
矮小極まる保身の一心からである。
己はそれで良心が痛まぬのか。
痛い。もう胃がキリキリする。
というか最初から胃弱なのだろうか。
この身体はどこまで脆弱なのか。
いや、脆弱なのは己の心より他ない。
これ以上、他責を重ねては
流石にふてぶてしい己の心も
その下劣さを保てない気がしてきた。
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?アカリ?
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