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ちなつ(21)
T145 B86(D) W54 H78
閉館間際の市民プール。
いつもより少し長く泳いだせいで、更衣室には私ひとりしかいなかった。
髪から雫がぽたぽたと落ちる音が、静かなタイルの床に響く。
ロッカーの前で水着の肩紐を外すと、ぴたりと張りついた布がゆっくりと肌から剥がれていく。
その感触に、思わず身震いした。
「……ひとり?」
背後から聞こえた声に、心臓が跳ねた。
驚いて振り返ると、ドアの隙間から誰かが立ち入っていた。
プールのスタッフでもない。
見覚えのない男。
でもどこかで見たような――そう、何度も通っているこのプールで、時々視線を感じていた。
「やっぱり…君、気になってたんだ」
湿った空気の中、その男はゆっくりと距離を詰めてきた。
足がすくんで動けない。
恐怖と、それ以上に混じる妙な期待。
逃げなきゃいけないのに、心の奥で何かが囁いてくる。
「こんなとこで…ダメだよ…っ」
そう言葉では拒んでいるのに、タオルの隙間から覗く素肌に、彼の手がふれたとき――
私は、声を飲み込んだ。
温かく、ぬるりとした手。
湿気で敏感になっていた肌は、その感触を拒めなかった。
触れられるたびに、背筋を電流が走る。
誰か来たらどうしよう――そんなスリルが、かえって理性を曇らせる。
「ちゃんと、声、我慢できる…?」
囁きが耳に落ちた瞬間、私はもう、抗う気力を失っていた。
蒸気の中、息遣いと濡れた肌の音だけが、静かに更衣室に響いていた。
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