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(お題:タイムスリップ
言語の壁、コミュニケーションの今昔)
?
再び、夢を見た。夢の中でトニーは
航空会社時代の親友たち
四人と語らっていた。
もう会えないと思っていた四人の仲間。
今頃、彼らは元気にしているだろうか。
だが夢の中のトニーは
純粋にトニー本人というわけではなかった。
トニーはトニーそっくりな日本人の男に
身体を借りていた。
これは筆山?いや違う。
どうやら波佐間という男だった。
妻を亡くして根暗になっている男だった。
その妻は逢坂命という美貌の人であった。
古語で言うところの超マブいスケであった。
トニーは波佐間が可哀想だった。
しかし、トニーと一体になっている
波佐間は笑っていた。
良かった。この男はまだ笑えるのだ。
トニーは感謝した。
ありがとう波佐間。
あなたのお陰で最期に友に逢えた。
何とか波佐間も
会いたい人に会えるといいんだが。
トニーは考えた。
しかし、考えるうちに不安になってきた。
世界には同じ顔をした人間が
三人はいるという。
ということは、トニーは夢の中とはいえ
もはやそれをコンプしてしまった。
そして、ドッペルゲンガーのジンクス。
あの呪いが本当ならば…。
?
翌朝、トニーは冷たくなっていた。
老衰だった。32歳であった。
「…寿命短すぎねえか?」
ロバートが呟いた。
「仕方ないだろう。
トニーは太く短く生きる宿命だったんだ」
同僚のスコットが言った。
「俺らの知らないうちに
三人分くらいの人生を生きてたのかも」
トラヴィスが絵を持ってくる。
「その絵は?」
「なんかコンクールに出すって言ってた。
画家になるのが夢だって」
「じゃあ俺たちで出しといてやろうぜ」
ロバートが絵を手に取った。
「いいのか?一応、トニーの遺品だぞ」
スコットが少し心配そうな顔をする。
「いいだろ。ひょっとしたら
夢が叶うかも知れないんだし」
トラヴィスは乗り気だ。
「航空会社に軍人、次は画家か。
確かに三人分だな」
「まあそう言うなよ。
トニーは夢追い人だったのさ」
「ところでこれ、何の絵なんだ?自画像か?」
ロバートは訝し気な目で絵を見ている。
「わかんない。
自画像にしちゃ変な絵だよな」
「なんて題名なんだ?」
「確か…よみち…って言ってたような」
「なるほど。夜の道ってことか。
わかんねーけど」
いくら見ても意味がわからない絵なので
ロバートは考えるのを辞めた。
?
トニーの絵は、なんと大賞を受賞した。
絵守彩人という画家との
同時受賞であった。
びっくりしたロバートは
慣れないドレスコードに身を包んで
美術館へ向かった。
トニーの作品は、絵守彩人の作品の隣に
華美に展示されていた。
まず絵守の作品は
作家が俯いて机に向かっている
シンプルなものだ。
顔も見えない程に項垂れているその姿から
絶望が色濃く伝わってくる。
『筆山文彦』という題名だ。
聞いたことのない作家だが
実在するのだろうか?まあ創作だろう。
そして、金縁の額に入れられて
すっかり立派に見えるトニーの作品。
月明りが照らす夜道を
トニーそっくりな男と、美貌の女…
古語で言うところの超マブいスケが
仲睦まじく手を繋いで
幸せそうに笑い合いながら歩いている。
そしてその脇の、道から外れた暗がりで
これまたトニーと同じような顔をした二人が
掴み合いの喧嘩をしている。
三人の男と一人の美女は
光り輝く展示の中で
一際幸せそうに
一方では一際険悪そうに見えた。
「やっぱりわけわかんねー絵だなぁ」
ロバートは絵の前に立って
30分くらいその謎を眺めていた。
が、やはり全く意味が解せず
馬鹿馬鹿しくなってきて
考えるのを辞めて帰宅した。
?
額縁の下に
そのわけわかんない絵の名前が
より一層わけわからなく印字されていた。
『黄泉路』
?
?アカリ?
?
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(お題:タイムスリップ
言語の壁、コミュニケーションの今昔)
こうして、両軍の間に
暗黙のクリスマス休戦が取り交わされ
兵士たちは束の間の安息を夜に送っていた。
筆山はだいぶ未来のアニメの話を
ロバートに聞かせた。
ロバートは
コードギアスの結末を聞いて涙した。
そして深夜。
唐突に、ドイツ軍の塹壕の中から
喧騒が響いた。
何やら揉め事のような雰囲気。
「Hey, lass das!」
「Rauszugehen ist keine gute Idee!」
「しゃらっぷみーは
まいはーとうぃるごーおん」
どうも誰かが
塹壕の外に出ようとしているのを
流石に危ないと止めているようだ。
そしてとうとう、その何者かが
塹壕の外へ飛び出てきた。
一人だけ、変なドイツ語?を喋っていた
その人だろう。
ロバートが素早くその人影に銃口を向ける。
他のフランス兵も同様に。
「やめろ!」筆山は叫んだ。
ロバートはびっくりしたような顔をして
しばらく筆山の方に首を向けていたが
やがて塹壕内に向き直って言った。
「Attendez! Ne tirez pas!
C’est la tr?ve de No?l aujourd’hui.
Pas de massacre. Vous comprenez?」
どうやら撃つなと言ってくれているようだ。
その間も、変なドイツ語?のドイツ兵は
両手を上げながら
ゆっくりとこちらへ近づいてくる。
武器を持っていないことを確認した
フランス兵たちは
お互いを発砲しないよう説いた。
「Il n’a pas d’arme. Ne tirez pas.
Moi non plus, je ne veux pas tirer.」
誰も撃たなかった。
「トニーお前も出て行ってこいよ」
ロバートが耳元で囁いた。
「え?いやそりゃ危なくないか?」
「大丈夫だ。お前のキツイ歌のお陰で
みんな久しぶりに人間に戻れたんだ。
向こうも同じさ。誰も撃ちゃしない。」
そしてロバートはまた
塹壕内に向けて演説した。
「Notre h?ros Tony va sortir comme
ambassadeur de No?l. Ne l’arr?tez pas.」
ちょっと止めて欲しかったけど
誰も止めてくれなかった。仕方ない。
筆山は塹壕から思い切って飛び出した。
ドイツ軍の塹壕から銃口の気配。
慌てて筆山は両手をあげる。
それから
目の前の人影にゆっくり歩み寄った。
ロバートの言った通り。
誰一人、発砲する者はいなかった。
?
やがて、両軍のクリスマス大使は
戦場の真ん中で邂逅した。
いつ発砲されるかわからないまま
ここまで歩く恐怖は
途轍もないものがあった。
そしてそれは相手も同じ。
そんな勇気と友好の志を持った相手となら
今日くらい、塹壕から出て平和に過ごそう
って話ができるかもしれない。
筆山は握手を求めて手を差し出した。
相手もそれに応えるように
手を差し出してきた。
と、その時。
暗闇でよく見えなかった
相手の顔に月光が差した。
次の瞬間
筆山はそいつの顔をぶん殴っていた。
もんどり打って大地に倒れたそいつの顔は
筆山と瓜二つであった。筆山は更に追撃。
馬乗りになって
己の顔をしたそいつをボコボコにした。
「おい!トニー!貴様!
全部!全部貴様のせいだ!
この野郎!
元の場所に返せ!元の場所に戻りやがれ!」
トニーは何も答えない。
おそらく転倒した際に
頭を打って気絶したんだろう。
「何だお前!なんでドイツ軍にいんだよ!
裏切り者め!ふざけるなよ!
お前のせいで俺はなぁ…」
?
それを見ていたドイツ軍は
これをフランス軍の騙し討ちと思い
筆山を蜂の巣にした。
フランス軍もこれに応戦して
マシンガンを乱射した。
筆山もトニーも
みんなグチャグチャのミンチになった。
クリスマスの夜、両軍は
第一次世界大戦において
最も苛烈な戦闘を行った。
後にこの話は
「クリスマスの悲劇」として語り継がれ…
?
…というところでトニーは目を覚ました。
ルームメイトのロバートが眠い目をこすって
二段ベッドの上から覗き込んでいる。
「どうしたんだトニー?
いきなり飛び起きて。
やけにうなされてたぞ?」
「ろんぐたいむのーしーゆー。
みーはいんまいどりーむで
のべりすとでごんした。
ばってんほわいとぅるーすなみーは
あーみーかららなうぇい。
いくすちぇんじのべりすとなみーが
あーみーとれーにんぐ。
せやけどさどんりわーるどうぉーに
とらぶるとらべる。
みーはくりすますまで
なんでんかんでんさばいばるだんす。
ほんでさいれんないしんぎんしたら
あーみーずぴーすふる。
みーはそこでとぅるーすなみーと
みーつしたばい。
ばってんのべりすとなみーは
むかちゃっかふぁいあで
とぅるーすなみーを
ぱうんどふぉーぱうんどでしふぉんけーき。
ほいであーみーず
おーるぶらっでぃうぃんたーすのう
れいんぼーまうんてんなってもてん」
「ん~?
つまりお前は夢の中でお前に間違われて
その途中で第一次世界大戦に
タイムスリップして
お前はお前に出会うけども
結果的にドッペルゲンガーに絡まれて
ボコボコにされるみたいな感じで
お前は死んで、そのせいで
ドッペルゲンガーもみんなも死んで
せっかくのクリスマスが台無しに…
ん~?意味わかんねぇ。
なんだそりゃ」
まだ夜中だった。
「とにかく、もう起こすなよ」
ロバートは再び
ベッドの上に戻って横になった。
トニーもまた眠ることにした。
ベッドの隅に立てかけた
描きかけの絵のキャンバスが
目に飛び込んできた。
キャンバスには月明りが照らす
異国の夜道が描かれていた。
何かが足りない気がする。
その絵を眺めながら
トニーは微睡みに落ちていった。
?
?アカリ?
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(お題:タイムスリップ
言語の壁、コミュニケーションの今昔)
一ヶ月が過ぎた。
凍えるような寒さ。死臭が漂う塹壕。
感染症に罹った者。
凍傷で動かなくなった者。足を引きずる者。
目の前の腐った友軍の死体の上を
それでも兵士たちは進んでいく。
頭上僅か数寸を飛び交う
黒い風から低く身を隠しながら。
大砲の破片が掠った者は
肉ごと吹き飛ばされた。
敵陣に突撃した同僚はバラバラになった。
いつ何時襲ってくるかわからない
敵兵の奇襲に怯え続け
発狂していく仲間たち。
「早く地獄へ堕としてくれ」。
塹壕の壁にそんな書き残しがあった。
そう、ここじゃ地獄の方がまだ生温い。
人間の罪業の極限は
ゲヘナの底よりまだ深い。
そんな中で、筆山は今日も眠る。
もう助からない友の呻きを子守歌に。
眠っている我が身に
砲弾の雨が降り注がぬよう祈りながら。
もはや開始五ヶ月で
百万人もの兵士が死んでいた。
奈落の暗がりに閉じ込められているのは
こちらばかりに非ず。
とっくに両軍とも限界だった。
一秒でも早く
この闇から解放されたかった。
死にたくない。殺したくない。
全ての兵士の望みはただ一つ。
「早く戦争が終わって欲しい」。
そのたった一つだった。
?
雪が降る。綺麗だ。
全てを凍結させてほしい。
そう思いながら
筆山は降り積もる雪を眺めていた。
その雪は、重なり、折あって
人の顔を成し始めたように見えた。
絵守の顔が顕れた。
絵守はヌクヌクとソファで
暖炉にあたりながらニヤニヤしていた。
全身が熱くなった。
筆山の体中に熱い血潮が流れ出す。
筆山はまだ生きている。
死にそうになる度
絵守憎しの一念をして魂を燃やし
復活し続けてきたのだ。
そして幾多の死線を越えてきた。
戦友たちの屍に囲まれた塹壕。
隣にはロバートが座っている。
「なあ、今夜はクリスマス・イヴだぜ。
信じられるかい?」
「ああ。どおりでみんな
センチメンタルだと思った」
「どうセンチメンタルなんだ?」
「いつもより静かだ」
「そりゃみんな死んでるからな」
「おセンチな戦場だな」
己がこの前線にタイムスリップしてきてから
一ヶ月が経ったということか。
今やフランス外人部隊で
軍事演習していた頃が遠い天国に感じる。
静かな夜だった。
今までで最も静かな
最も生と程遠い聖夜だった。
ただただ死の緊張だけが
夜を覆い尽くしていた。
?
澱んだ空気の中に突然、歌声が咲いた。
ドイツ軍の塹壕の方から
クリスマスキャロルが聞こえる。
「さ~いれんなあぁ~い…
ほ~おぉりぃなあぁ~い…」
誰かが歌っていた。凄まじい音痴だった。
しかし、こんな凄惨な場所に
こんな寂しい夜に
その歌はとても不似合いで
とても尊かった。
筆山は故郷の歌を思い出した。
歌の不得意な筆山が
毎年、学校で、パーティーで
嫌々歌わされていた、あの歌。
「き~いよぉしぃ~…
こ~おぉのよぉるぅ~…」
気付けば筆山は歌っていた。
悍ましい音痴だった。
しかし
相対する塹壕から響く音痴の二重奏は
奇天烈なハーモニーを生んだ。
最初は二人の小さな声だった。
両軍の兵士たちは黙って聞いていた。
しかし、暫くして
歌が重なって聞こえてきた。
ドイツ兵が一人、フランス兵がまた一人と
歌い始めたのだ。
ロバートも隣で歌い始めた。
長三度でハモっていた。
なんだか鼻についた。
だがロバートも、他の仲間も
初めて見るような安らいだ顔で歌っていた。
きっとドイツ軍の方でも
同じだったのだろう。
やがて歌は、両軍の大きな合唱となって
戦場に響き渡った。
その歌が、死神を掻き消したのだろうか。
さっきまで隣り合わせだった死の気配が
無くなっていた。
?
そして歌が終わった。
両軍から、大きな歓声が上がった。
ついさっきまで
命のやり取りをしていた両軍が
この夜、互い交わしたプレゼント交換。
自然と涙が流れた。
己たちは、人間だったのだ。
相手もまた、人間だったのだ。
この一ヶ月
すっかりそれを忘れていたような気がする。
小さな合唱祭を終えると
ドイツ兵たちは
木に蝋燭を付けた即席のクリスマスツリーを
塹壕の上に置き始めた。
それは、今夜だけは争わずに
ふクリスマスを共に祝おう。
そう願い込められた
ドイツ軍からのメッセージだった。
フランス軍はそれを恭しく受け取るように
攻撃を一切行わなかった。
?
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(お題:タイムスリップ
言語の壁、コミュニケーションの今昔)
なんでそんなことがわかるかって?
それは同室のロバートが大のアニメ好きで
日本語がペラペラだったからだ。
じゃあロバートに
直談判して貰えばいいじゃないか
という話だが、なんということか。
彼はこれを面白がって
決して協力してくれない。
「お前がいなくなったら
ジャパニーズアニメの話を
聞けなくなるだろ?」
ロバートはそう言って
いつも気楽に澄ましている。
他人事だと思いやがって。
?
こうなったら
兎にも角にもにも上官にかけあうしかない。
しかし実際、部隊長はトニーのことについて
毎回頭を悩ませていた。
そして、毎回の珍騒動に
もはや呆れ果て、疲れ果て
ある種の思考的虚脱状態に陥っていた。
もはや筆山がトニーでなくても
軍事演習ができれば問題ない
という考えにまで堕落していた。
なんたる軍務違反であろうか。
もしそんなことが露見したら
国際問題になるとは思わないのか。
しかし彼は、訓練中以外
魂が抜けたように
コーヒー片手に
中空に目を彷徨わせるばかりで
そのくせ、そのコーヒーは一口分も
減っているところを見たことがない。
軍人、失格。
もはや廃人である。
筆山は戦時中、丙種に分類されて
戦役を逃れた太宰治のことを
極地的に羨んだ。
何故に文人墨客たる己が
こんな兵役を強いられねばならんのか。
何故にこんな
物騒な軍服を着ねばならんのか。
太宰だって着なかったのに。
まして我が日本国民の大半は
未だ大局を見ず
平和ボケの真っ最中だというのに。
いつ果てぬ仮想塹壕戦の中に
渦巻く煉獄の中で
己だけが外国人として
終わりなき旅路を歩かされている。
このままではこの先の行き止まりに
骨を埋めることになってしまう。
なんとかしなければ。
そう思いながら
筆山は今日も黄ばんだ
トニーの軍服を一人洗い続けていた。
漂白剤を入れすぎて
もはや迷彩柄が寒冷地仕様になりつつある。
一度、漂白剤の海に顔を突っ込んでみたが
残念なことに頭の中が
真っ白になることはなかった。
「おいおい、なんだ白い顔して。
ジョーカーに憧れてテロでも起こす気か?」
ロバートの馬鹿笑いが兵舎の窓から
広がる空に吸い込まれて
異国の空気を震わせた。
筆山の拳も震えていた。
青空の中に、消えた編集者のニヤつきに
似た雲が流れていた。
あってもなくてもいいような雲だったが
それはとても遠くに感じた。
目を閉じると、祖国も遥か彼方に浮かんだ。
浮かんで飛んで壊れて消えた。
筆山はその日も一日
異国で泥と砂塵と思弁の海に沈んだ。
そして夜。
いつものように硬いベッドの上で
丸まって微睡みに堕ちた。
二段ベッドの上の
ロバートの寝言が微かに聞えた。
「Keep your head down… Tony…」
?
目が覚めると、激しい轟音が響いていた。
筆山は泥濘の中に這いつくばっていた。
なんということだ。
己は軍事演習中に微睡んでしまったのか?
しかも昨晩寝入ってから
ここまでの記憶が飛んでいる。
ストレスか?頭でも打ったか?
それともロバートの放屁か?
昨日の晩飯には確か香辛料が多かった気が…
「Keep your head down!
頭を下げろ!トニー!」
前方でロバートが叫んだ。
瞬間、彼方から機関銃の鉄の刃が
容赦なく地表を薙ぐように襲い掛かった。
伏せて尚ギリギリのところを狙ってきた。
おかしい。
気付けば塹壕がいつもより深い。ガンッ。
後方で鉄塊が鉄兜を叩く鈍い音がした。
更に遠方で兵士たちの叫び声が聞こえた。
機銃掃射の音に混じって、あちこちから
悲鳴、怒声、呻き声が聞こえる。
なんだ?一体これはなんだ?
「ロバート、一体こりゃどういうことだ?」
「ああ?何がだよ」
「こりゃ本当に軍事演習なのか?」
「ついに頭イカれたか?
おいトニー、しっかりしろ」
「いや、俺は正気だ。
多分、記憶が飛んでるだけだ」
「まあ、正気でいろって方が
無理な注文かもしれねえな。こりゃ」
「確認させてくれ。
ここはどこだ?今はいつだ?」
「ここは十一月末のスイス国境だ。馬鹿野郎」
「何年?西暦何年だ?
相手は?何処の兵士だ?」
「1914年のドイツ軍だ。
目ぇ覚めたかよ、浦島君」
浦島太郎の話を知っているほど
ロバートが日本通だったということに
筆山は不覚にも感心した。
そして絶望した。
思えばこの取材旅行に来てからこっち
わけのわからないこと続きだったが
今のこれはそんなレベルじゃない。
戦争だ。戦争が起こっている。
軍事演習でも何でもない。
本物の大人災だ。1914年。
まさに第一次世界大戦の幕開けの年。
その悪夢そのもので名高い塹壕戦が
おそらくここ。
スイス国境の西部戦線。
目の前が黄土色一色になった。
いつぞやと同じ格好で
筆山は土塊に突っ伏していた。
涙を隠すためではない。
頭が思考を拒否し、運動を止めた。
ドッペルゲンガーの次はタイムスリップ。
理解できない。
漫画じゃないんだぞ。
ましてや小説でも絵画でもない。
そういえば絵守は元気にしているだろうか?
こんな今生の別れも
クソもないような羽目になるくらいなら
最後の誘いに乗って
一緒に美術館に行ってやればよかった。
そう思うと、余計に泣けてきた。
滲んだ瞳の向こう側の世界で
絵守がニヤニヤ顔で
画布に絵具をのたくっていた。
その彼方から、絵守の声がした。
「これは大賞を狙えそうですぞ!」
その嬉しげな響きに
何だか己への嘲りが
含まれているような気配を感じた。
筆山はムカついた。
ムカついたおかげで黄泉返った。
なんだか絵守が己にとって
良からぬ絵を拵えようとしている。
そんな予感がしたのだ。
あの野郎。帰って一発ぶん殴ってやる。
こんなところで死んでたまるか。
友を殴るまで生き延びよう。
筆山は静かに心でそう誓った。
?
?アカリ?
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なんでそんなことがわかるかって?
それは同室のロバートが大のアニメ好きで
日本語がペラペラだったからだ。
じゃあロバートに
直談判して貰えばいいじゃないか
という話だが、なんということか。
彼はこれを面白がって
決して協力してくれない。
「お前がいなくなったら
ジャパニーズアニメの話を
聞けなくなるだろ?」
ロバートはそう言って
いつも気楽に澄ましている。
他人事だと思いやがって。
?
こうなったら
兎にも角にもにも上官にかけあうしかない。
しかし実際、部隊長はトニーのことについて
毎回頭を悩ませていた。
そして、毎回の珍騒動に
もはや呆れ果て、疲れ果て
ある種の思考的虚脱状態に陥っていた。
もはや筆山がトニーでなくても
軍事演習ができれば問題ない
という考えにまで堕落していた。
なんたる軍務違反であろうか。
もしそんなことが露見したら
国際問題になるとは思わないのか。
しかし彼は、訓練中以外
魂が抜けたように
コーヒー片手に
中空に目を彷徨わせるばかりで
そのくせ、そのコーヒーは一口分も
減っているところを見たことがない。
軍人、失格。
もはや廃人である。
筆山は戦時中、丙種に分類されて
戦役を逃れた太宰治のことを
極地的に羨んだ。
何故に文人墨客たる己が
こんな兵役を強いられねばならんのか。
何故にこんな
物騒な軍服を着ねばならんのか。
太宰だって着なかったのに。
まして我が日本国民の大半は
未だ大局を見ず
平和ボケの真っ最中だというのに。
いつ果てぬ仮想塹壕戦の中に
渦巻く煉獄の中で
己だけが外国人として
終わりなき旅路を歩かされている。
このままではこの先の行き止まりに
骨を埋めることになってしまう。
なんとかしなければ。
そう思いながら
筆山は今日も黄ばんだ
トニーの軍服を一人洗い続けていた。
漂白剤を入れすぎて
もはや迷彩柄が寒冷地仕様になりつつある。
一度、漂白剤の海に顔を突っ込んでみたが
残念なことに頭の中が
真っ白になることはなかった。
「おいおい、なんだ白い顔して。
ジョーカーに憧れてテロでも起こす気か?」
ロバートの馬鹿笑いが兵舎の窓から
広がる空に吸い込まれて
異国の空気を震わせた。
筆山の拳も震えていた。
青空の中に、消えた編集者のニヤつきに
似た雲が流れていた。
あってもなくてもいいような雲だったが
それはとても遠くに感じた。
目を閉じると、祖国も遥か彼方に浮かんだ。
浮かんで飛んで壊れて消えた。
筆山はその日も一日
異国で泥と砂塵と思弁の海に沈んだ。
そして夜。
いつものように硬いベッドの上で
丸まって微睡みに堕ちた。
二段ベッドの上の
ロバートの寝言が微かに聞えた。
「Keep your head down… Tony…」
?
目が覚めると、激しい轟音が響いていた。
筆山は泥濘の中に這いつくばっていた。
なんということだ。
己は軍事演習中に微睡んでしまったのか?
しかも昨晩寝入ってから
ここまでの記憶が飛んでいる。
ストレスか?頭でも打ったか?
それともロバートの放屁か?
昨日の晩飯には確か香辛料が多かった気が…
「Keep your head down!
頭を下げろ!トニー!」
前方でロバートが叫んだ。
瞬間、彼方から機関銃の鉄の刃が
容赦なく地表を薙ぐように襲い掛かった。
伏せて尚ギリギリのところを狙ってきた。
おかしい。
気付けば塹壕がいつもより深い。ガンッ。
後方で鉄塊が鉄兜を叩く鈍い音がした。
更に遠方で兵士たちの叫び声が聞こえた。
機銃掃射の音に混じって、あちこちから
悲鳴、怒声、呻き声が聞こえる。
なんだ?一体これはなんだ?
「ロバート、一体こりゃどういうことだ?」
「ああ?何がだよ」
「こりゃ本当に軍事演習なのか?」
「ついに頭イカれたか?
おいトニー、しっかりしろ」
「いや、俺は正気だ。
多分、記憶が飛んでるだけだ」
「まあ、正気でいろって方が
無理な注文かもしれねえな。こりゃ」
「確認させてくれ。
ここはどこだ?今はいつだ?」
「ここは十一月末のスイス国境だ。馬鹿野郎」
「何年?西暦何年だ?
相手は?何処の兵士だ?」
「1914年のドイツ軍だ。
目ぇ覚めたかよ、浦島君」
浦島太郎の話を知っているほど
ロバートが日本通だったということに
筆山は不覚にも感心した。
そして絶望した。
思えばこの取材旅行に来てからこっち
わけのわからないこと続きだったが
今のこれはそんなレベルじゃない。
戦争だ。戦争が起こっている。
軍事演習でも何でもない。
本物の大人災だ。1914年。
まさに第一次世界大戦の幕開けの年。
その悪夢そのもので名高い塹壕戦が
おそらくここ。
スイス国境の西部戦線。
目の前が黄土色一色になった。
いつぞやと同じ格好で
筆山は土塊に突っ伏していた。
涙を隠すためではない。
頭が思考を拒否し、運動を止めた。
ドッペルゲンガーの次はタイムスリップ。
理解できない。
漫画じゃないんだぞ。
ましてや小説でも絵画でもない。
そういえば絵守は元気にしているだろうか?
こんな今生の別れも
クソもないような羽目になるくらいなら
最後の誘いに乗って
一緒に美術館に行ってやればよかった。
そう思うと、余計に泣けてきた。
滲んだ瞳の向こう側の世界で
絵守がニヤニヤ顔で
画布に絵具をのたくっていた。
その彼方から、絵守の声がした。
「これは大賞を狙えそうですぞ!」
その嬉しげな響きに
何だか己への嘲りが
含まれているような気配を感じた。
筆山はムカついた。
ムカついたおかげで黄泉返った。
なんだか絵守が己にとって
良からぬ絵を拵えようとしている。
そんな予感がしたのだ。
あの野郎。帰って一発ぶん殴ってやる。
こんなところで死んでたまるか。
友を殴るまで生き延びよう。
筆山は静かに心でそう誓った。
?
?アカリ?
?
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投稿日時

(お題:タイムスリップ
言語の壁、コミュニケーションの今昔)
――それは悪夢だったのか
前世だったのか
あるいは誰かの描きかけの
絵の中だったのか。
?
土が燃え立つような砂塵の中で
頭上わずか一尺足らずを
鉄の塊が出鱈目に掠めて
前進の力を削っていく。
四肢に問題を抱えたように
地べたを這いながら
筆山は己が運命を呪っていた。
一体なんで
こんなことになってしまったのか。
前衛のロバートが屁をこいた。
昨日配給で食べた芋料理を
南アフリカ原生林で取れた
謎の毒草をフレーバーに
地獄の釜でグズグズに掻き混ぜたかのような
タナトスな香りが
弾丸に纏わりつく風に乗って
嗅覚どころか視覚にまで襲いかかる。
一瞬、目の前が
黄土色一色になったような気がした。
目の異常かと思ったが
果たして私は土塊に突っ伏していた。
あまりの屁の威力に
気絶してしまったのだろうか。
いや、違う。
同僚の放屁を顔面で
受け止めなければならない
その不条理に浮かんだ涙を隠すために
筆山は咄嗟に顔を土塊に伏せて隠したのだ。
「Get your head up, Tony!」
しばらくそのまま泣いていたかったが
上官の耳を劈く声が鼓膜を圧迫し
その圧で筆山の頭は
ピタゴラスイッチのように跳ね上がった。
瞬間、黒い風が
頭髪を削るように薙いでいった。
その小粒な12.7×99mmの死神
は私を失禁させるのに
十分な説得力を持っていた。
小粒といえば納豆だ。
この規格はNATOだけどね。
ハハ。おもろ。
筆山の下半身に不快な温もりが広がった。
ゲシャゲシャになった
カーゴパンツを引き摺りながら
それでも筆山は停止を許して貰えない。
前からはメタンガス
後ろからはアンモニアが襲ってくる。
後陣を配す同僚たちから
非難の声が上がっている。
それはそうだ。
筆山の這った後の地面は
ナメクジよろしく
陰湿に地面を湿らせている。
そこを後から通った
筆山の同僚たちの軍服には
素敵で最低な
ラメ加工が施されることだろう。
訓練終了後のロッカールームで一人
居残って全員分の衣服を洗濯している
この後の己の姿を想像して
筆山はまた泣きそうになった。
飯に間に合わない。
しかし仕方がない。
屁ならまだしも、小便を引っ掛けられて
憤怒に駆られない聖人など
残念ながらこの隊にはいない。
?
ああ神よ、我が罪障を許したまえ。
懺悔と共に、筆山は再び己が運命を呪った。
一体、どういう因果か。
何で己はこんなところで
砂を舐めているのか。
?
編集者からフランス革命について
書いてみないかと打診されたのが二ヶ月前。
押しに弱い筆山が唯々諾々で日本をたち
フランスに到着したのが一ヶ月前。
同行していた編集者が
酒場で現地人女性を軟派し
待ち合わせに現れたその女性の
全盛期のドゥウェイン・ジョンソン
のような彼氏に連れ去られ
行く方知れずになったのがその二日後。
途方もなく街を彷徨い歩いていた筆山が
フランス外人部隊の基地前で
屈強な軍人三人に取り押さえられたのが
三週間前。
なんでもトニーというフィリピン人が
軍事演習中に脱走したとかなんとか。
筆山は何度も身の潔白を説明した。
しかし作家である筆山は
日本語のプロフェッショナルではあっても
外国語においては
海外文学の翻訳本さえ
読むのを嫌っていたため
彼の英語は壊滅的であった。
「あいあむじゃぱにーず
まいじょぶのべるらいてぃんぐ」
強烈なビンタが飛んできた。
「If you disrespect the army again…」
目の前の軍曹の肩が怒りで震えている。
それでも筆山は何とか説得を試みる。
「のーいんぐりっしゅ
あいむぷりてぃーひゅーまん」
「I’ll have you locked in the brig!」
今度はさっきと反対側の頬を
強烈な張り手が襲った。
少し左右のバランスが
よくなったような気がした。じゃない。
なんでこんな道化がチーク塗った
みたいな顔にされてるんだ。わからない。
わからないが、なんか
「これ以上口答えするなら
懲罰房に叩き込むぞ♪」
みたいなことを言ってた気がする。
尚更、訳がわからなかった。
?
そしてその訳のわからないまま
筆山は軍事演習に参加させられていた。
今日でもう二十日目だ。
その間にわかったことは
なんでもそのトニーという
フィリピン人は日系で
筆山に顔が瓜二つで
加えて脱走の常習犯であり
毎回捕縛されて連れ戻される度に
自分はトニーではない。他人の空似だ。
と訴えていたそうな。
そしてタチの悪いことに
トニーは毎回その人種を変えて
トボける癖があった。
一回目はドイツ人、二回目はガーナ人
三回目はムジャヒディン
4回目はミスチャイナ
そして今回は日本全共闘の生き残りの
フリをしてシラを切ろうとしている。
と思われているらしい。
?
?アカリ?
?
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つ


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(お題:創作への苦悩
幻想と現実、一芸に秀でた者)
?
「さっきから聞いてりゃ
下らん小理屈並べやがって。
その小理屈に自分だけで
凝り固まっているなら
よし僕もこんな暴挙には出るまい。
しかしね、絵守お前
言葉を理屈と言いやがったな?
物書きを侮辱しているのか?
この世は言葉でしか
顕せないものに満ちている。
というか、嗚呼、もう言ってやろうか?
言おう。
言葉にできないような芸術なんて
贋作なんだよ。
言葉にできない時点でただの夢幻。
インチキ宗教と変わらない。
だから僕はお前のことを殴ったんだ。
そんな間違った信仰心から
お前の目を覚させるためにね。
僕は友を助けるためにやったんだ。
その証拠にどうだ。
お前の曲がった鼻より
僕の曲った手首の方が
よっぽど腫れ上がっているじゃあないか」
鼻水の代わりに鼻血を垂らして
俯いていた友人はしかし
急にその態勢から屈伸。解放。跳躍。
そのまま私の顎に
ロケット頭突きを喰らわせてきた。
意識が飛んだ。
私は冷たく硬い床にどうと倒れた。
その際、さらに後頭部を
強かコンクリートに打ちつけた。
もはや私のヘッドダメージは限界であった。
薄れゆく意識の中で
友人の喚き声が聞こえる。
?
「筆山貴様、よくも俺を殴ったな。
物書きの、しかも売れない物書きの分際で。
画家はな、常に世界の深淵と
向き合っているんだ。
お前たちのように言葉で物事を
どうこう理屈づけて動かそう
って俗物と一緒にするない。
その俺の高い高い鼻をへし折ったお代は
高く付き過ぎてお前の命でも足りないぞ。
さあ、立て。立ってもっと俺に殴られろ」
友人が私の襟首を
掴んで引き起こそうとするが
しかし私はもはやその時
この世の人ではなくなっていた。
私は私を何だか
高いところから見下ろしていた。
なんだ、これが人生か。
それから私の眼に絵が顕れ始めた。
その絵は暴力という色に満ちていた。
?
友人の戯言を聞いた
たまたま居合わせた作家たちが
激昂して友人に襲いかかっていた。
また、そこに
たまたま居合わせた画家たちが
その友人の弁を庇ってこれに応戦した。
そして普通に
たまたま居合わせた人々は通報し
たまたまではなく突入してきた警官隊は
警棒を持って画家や作家たちを
打ちのめした。
するとこちらも黙ってはいない。
作家は絵の額縁を千切っては投げ
千切っては投げて応戦した。
すると、たまたま居合わせた
額縁匠の老人の怒声が飛んだ。
「貴様、ワシの額縁になにをする」
画家たちはこれの援護に回ったが
それがまた新たな争いの火種となった。
「そうだ。
額縁なんてものはどうでもいいが
物書き風情が崇高な絵画に
手を触れるんじゃねえ」
「なんだと?
額縁がなければ貴様らの落書きなんぞ
紙切れ以下じゃろうが」
「耄碌するな爺。
額なんてのは絵を際立たせるための
ただの飾りだ。
美女の取り巻きの
不細工と変わらんぞなもし」
「額にも納まらん絵描きが何をほざくか」
額縁匠は乱心して画家たちを
作家たちに向けて投げ飛ばし始めた。
画家にぶつかられて怒った作家たちは
画家を更に警官に向かって
投げ飛ばし始めた。
警官は飛んでくる画家たちを
片っ端から警棒で打ち落とした。
打ちのめされた画家たちは
もはや発狂して出家し、
寺で物書きに耽るようになった。
やり過ぎて発狂した作家たちは
精神病棟に送られ
セラピーで絵を描くようになった。
張り切り過ぎた額縁匠は老衰して死んだ。
責任を問われ懲戒免職になった警官隊は
ヤタケタでギャングを組織した。
東京の治安は既に南アメリカ並だ。
政府は自衛隊を国力と定め
これの鎮圧に腐心したが
内乱に充てた軍事費が
増大し過ぎて国庫が破綻。
日本はチョッパリ州として
アメリカの一部となった。
?
私は日本人のうちに
死 ねてよかったと思った。
そして私にはどうやらもう時間がない。
なぜなら
さっきから羽根を生やした素っ裸の
なんだか嫌な薄ら笑いを
浮かべている幼児たちが
ベビーパウダーの匂いを漂わせながら
私の五肢を束縛し
第六天へ向けて屠去ろうとしているからだ。
?
しかして私は満足であった。
よかった。
人はまだ自分の誇りを守るために
剥き出しになれるのだ。
そしてそのために死ぬる。
私はその先駆けとなった。
正直
あんな奴らみたいになって生き延びるより
私の最期の方がよっぽど上等じゃないか。
踏み潰されてグチャグチャだったけど。
まあいいや。
私は天上にてこの人間の
愛しき浅ましさを一冊に書き上げ
第六天魔王様に献上しよう。
そうすれば
天上での出世だって思いのままだ。
?
そんなことを思いながら
私は未だ机の前に向かって
一文字も書き上げていなかった。
友人からの誘いを断ってまで
我を通したというのに、なんたる様か。
こんなことなら美術館に行って
妄想の通り討ち滅ぼされていればよかった。
数滴の涙が原稿用紙に溢れた。
美術館には、絶望して机に向かい
嗚咽する男の絵が煌々とかざられていた。
?
?アカリ?
?
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(お題:創作への苦悩
幻想と現実、一芸に秀でた者)
――人類が滅びても原稿は白紙である。
?
人のプライドとは気付かぬうちに
踏み付けにされてしまっているものである。
かくいう私も何度となく
益体もなしに踏みつけられてきた。
私のプライドはもはや
マサイ族が何も知らずに語感だけで作った
ボルシチみたいにグズグズであった。
なんかよくわからない虫とかも入っていた。
まだ発見されていない虫かもしれない。
これを摘み上げて学会に発表すれば
一躍私も時の人?
いやそんな場合ではない。
学会。私は学会にまたも裏切られた。
ア ホな選考委員によって受賞を逃した。
私小説の読み方も知らない阿呆どもめ。
私は、三日三晩布団の中で
呪詛を吐き続けていた。
?
しかし、思えば私の私小説は写実的過ぎて
ただの事実の羅列というか
日記帳というか
そんな風な体たらくだったので
嗚呼、こんなものを見せられた選考員たちは
何て気の毒なんだろうか。
何を言うか。
一切を偽らず書く気概こそが
文学の神髄だろう。
いやでもそれってあなたの感想ですよね?
?
ここ数日、私の中では幾人もの私が
自己を顕示すべく戦っていた。
私は私を論破することに私の全てを賭けて
戦う私を憐れな私だと私視点で見ていた私。
私は一分置きに思想が変幻自在に分裂し
もはや解離性人格障害一歩手前であった。
それもこれも私小説の読み方すら知らぬ
選考委員たちのせいだ。
阿呆め。
私の思考は同じトラックを
グルグル回るだけで、一向に先へ進まない。
私は限界だった。
?
家で一人クサクサしている私を見かねて
友人の画家が尋ねてきた。
「筆山君、そんなに塞ぎ込んでいても
神経が衰弱する一方だよ。
一つ絵でも見に行かないかね」
私は天井の染みを数えるのに
とっくに飽きていたので、盲目的に頷いた。
我が家の扉を開け放った友人が
偉大な羊飼いに見えた。
そして私は盲目の子羊。
果たして美術館に
解脱の救済はあるのだろうか?
なんてことを羊は考えたりしない。
羊は気がつくとある大きな絵の前にいた。
?
胡乱な絵であった。愚鈍な絵であった。
キャンパス中央に
仰向けに寝っ転がったピエロが
その姿勢で中空に静止して
虚脱したような顔で空を仰いでいる。
だらしなく開き切った口からは
何の思慮も理念も感じられず
とりあえず目立つようにというように
出鱈目に装飾された衣服は
カラーボールの海に飛び込んで
全身が玉だらけになって取れなくなった人
みたいに稚拙だった。
バラバラに反目している
玉の色が目に煩かった。
そして背景ときたら
これはもう描くのが面倒になったのか
ただ退屈なだけの田園風景が
壁紙のように張り付けてある。
?
「人間、こうなってしまってはお終いだな」
私は意図せずして呟いていた。
「いや筆山君
これはどうして中々の名画だよ」
友人は興奮していた。
見ると目に涙まで浮かべている。
「一体、これのどこが名画なんだい?
こんな、作者が自分の私生活を開き直って
画布に塗沫しただけの愚作じゃないか」
「筆山君は何もわかっていないね。
ここには人間の全てが描かれているんだよ。
退廃。迷妄。愉悦。極楽と地獄。
エロスとタナトス。画家と娼婦。男と女。
陰と陽。北斗と南斗。
嗚呼、ぼかぁこれを見るために
生まれて来たのかも知れない」
友人の頬を滂沱たる涙が伝った。
馬鹿な。
正直、私は絵に対しては門外漢だが
芸術的センスは文学と通じているはず。
画家も小説も
親戚みたいなところがあるはずだ。
その小説家たる私が
この絵は愚作だと直感で断じているのだ。
しかも私は私小説家であり
この絵はその私小説の悪いところを
片っ端から集めてふぐ鍋で煮詰めたような
食ったら芸術が死ぬような呪物だ。
それをばこの男は
一体どれだけ拙劣な感性でもって
画家などと名乗っているのか。
?
「絵守君はそういうけどね。
文学的に見てもこの絵に価値なんてないよ。
何せこの絵には何のストーリーもない。
バックボーンも見えない。
意図すらぼやかしている。
無能な画家が書いた
実に卑劣な絵じゃないか」
「なんだい、筆山君は絵に
筋書きがないといけないというのかい?
バックボーンや意図?
真実にそんなものはないのさ。
この世の真実とは、ただそこに揺蕩う
浮世と常世の狭間のようなもの。
それを絵に切り取ったら
そこに言葉なんて
理屈が入り込む余地はないのさ」
友人は鼻水を床に垂らし
嗚咽しながら講釈を垂れた。
私はその鼻っ柱を唐突に殴りつけた。
慣れない殴打に手首に激痛が走った。
拳が砕けた気がした。痛い。
もう少し自分を労って
殴ればよかったと思った。
?
?アカリ?
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(お題:飛行機と出張、信頼
私の愚行、口から出まかせ)
?
その瞬間だった。視界が歪んだ。
涙が溢れていた。
五年間、一滴も出なかった涙が。
ヨミージが驚いた顔でこちらを見る。
俺は手で顔を覆った。
「俺は…」言葉が途切れる。
「逃げていただけだった」声が震えた。
妻が死んでから、ずっと。
何も感じないふりをして」
舞台の上では、女が男の亡骸を
静止したように抱き続けている。
「仕事を続けていれば
いつかまた会えると、勝手にそう決めて」
客席は、まだ息を殺したように沈黙して
微動だにしない。
「俺は、ただ許されたいだけだった。
誰かに、許してもらいたいだけだった」
暗い劇場の中で、頭の中の黒い靄が
塊になって喉元へ転がっていく。
やがて口蓋を埋め尽くしたそれは
圧力に耐えかねたように
咳を切って口から零れ出ていった。
「でも許されなかった。許せなかった。
俺なんか、早く死んじまうべきだったのに。
でも死 ねなかった。
俺一人だけ
こんなクソッタレな世界に取り残されて。
独りぼっちで。
俺は、寂しかった。
寂しくて堪らなかったんだ」
ヨミージは何も言わなかった。
ただ静かに、俺の肩に手を置いた。
そして、ゆっくりと
静かに俺を抱き寄せた。
ヨミージは、俺の耳元に
優しい声で囁いた。
「あなたは、どこにも行ってやしないわ」
?
聖母のような声だった。
菩薩の救済のような温もりだった。
クレメンティアの託宣のような響きだった。
涙が止まらなかった。
ヨミージの胸元は
俺の嗚咽でグシャグシャになった。
それでもヨミージは尚俺を抱き続けた。
しばらくして、ようやく顔を上げたその時。
色が、虚ろだった瞳に
反射して飛び込んできた。
照明の薄い青。緞帳の草臥れた赤。
客席の影を彩る緑。
五年間、モノクロだった俺の世界に
色が戻っていた。
俺は五年ぶりに、舞台を眩しいと感じた。
五年ぶりに、生きている気がした。
?
舞台は盛況に終わった。
俺はヨミージと並んで帰り道を歩いた。
「舞台に見入ってる君の横顔を見てさ」
何ともなしに俺は語り始めた。
「コーンウォールの約束を思い出したんだ」
ヨミージが首を傾げる。
「コーンウォール?イギリスの?」
「ああ。妻と新婚旅行で行くはずだった」
「そうなの。奥さんとの約束…」
ヨミージは何かを察したように
その先を留めた。
「劇場で一緒に
シェイクスピアを見るんだって。
とても楽しみにしてた」
ミナックシアター。妻と約束した場所。
「でも、今日それが
少しだけ叶った気がする」
俺はヨミージの方を振り返った。
自然と笑顔が零れた。
ヨミージも笑っていた。
大きな瞳いっぱいに
涙を溜めて笑っていた。
「なんで泣いてるの?」
「あなたが感傷的なこと言うからよ」
俺たちはまた笑い合った。
ずっと止まっていた時間が
やっと少し前へ進んだ気がした。
?
帰国の日。
ヨミージは搭乗口の前まで
見送りに来てくれた。
「色々お世話になったね。本当に。
君に会えてよかった。神に感謝しないと」
俺は顔の前で適当に十字を切った。
「大袈裟ね。でも私も会えてよかったわ。
本当に。会えてよかった」
ヨミージはそう言って
切なげな顔をして俯いた。
「どうしたの?」
「あなたはこれからどうするの?」
「ん?どういう意味?」
「その…悩み事は解決できた?」
ヨミージは
いつもの笑顔を作って顔を上げた。
俺は少し恥ずかしそうな
バツの悪そうな顔をして言った。
「あ~…その
あんだけ恥ずかしいところを
見せちゃったからね。
お陰様で吹っ切れたよ」
「じゃあ、もう大丈夫ね」
「ちっとは自分のために生きてみるよ。
っていうと
大変なのはこれからなんだけどね」
俺はちょっと苦笑いを浮かべた。
ヨミージはそんな俺を
満足そうな笑顔で見つめていた。
「あのね、最後に
どうしても伝えたいことがあるの」
と、突然にヨミージが真剣な声になって
真面目な顔で
俺の目を真っ直ぐに見据えながら言った。
「え?なに?どうしたのよ、急に」
少し面喰った俺に対してヨミージは
身を乗り出すようにして語り始めた。
「あのね。実はあ_―――――――――」
ヨミージの唇が動く。
俺はそれを聞いていた。
聞いていたが、届かない。
彼女の唇だけが
視界の中でゆっくりと開閉している。
その輪郭が、霞がかったように
どんどんぼんやりと薄れていく。
曖昧に、朧に、そして崩れた。視界が白む。
遠くで、銃声のような音が、また鳴った。
?
速報です。
今日午後、福岡空港に緊急着陸した
国際線の機内でハイジャック事件があり
警察は現場で男らを取り押さえました。
警察によりますと
犯人の男らは航空会社の元契約社員とみられ
拳銃のようなものを所持して
客室乗務員を人質に取り
機体を占拠していたということです。
この事件で
乗客の日本人男性一人が死亡しました。
死亡したのは東京在住の会社員
波佐間流生さん(30)です。
警察の調べによりますと
波佐間さんは人質となっていた
客室乗務員を助けようとして席を立った際
犯人の発砲を受けたとみられています」
画面は、滑走路に止まったまま
動かない航空機を映している。
その上には、絵具をのたくったような
雲一つない空の真っ青が
馬鹿みたいに開けて続いていた。
その色は
どこまでも静かでどこまでも寂しく
黄泉路の果てまで
永遠に続いているように見えた。
?
?アカリ?
?
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(お題:飛行機と出張、信頼
私の愚行、口から出まかせ)
?
「ヨミージです。通訳を担当します」
長い黒髪。静かな笑顔。
どう見ても妻そのものにしか見えない
その面貌。
違うのは、肌の色と、香水の匂いくらいだ。
さっきまで自己を責め立てていた仮説が
一瞬で吹き飛ぶほどの現実感。
顎先にメイ・ウェザーの
エキシビジョンパンチがヒットして
脳髄がぷっちんされた
ぷっちんプリンくらい揺れた。
地盤がそのプリンのキャラメルのところに
落ちてズクズクになって
俺の心は兎に謀られた狸のように彼岸近海を
どんぶらこどんぶらこと彷徨った。
ヨミージは、幻ではなかった。
ひょっとしたらこの女は
妻の生き別れの双子か何かであろうか。
「どうかしましたか?」
妻がやけに他人行儀な調子で
心配そうな顔をしている。
違った。この女はヨミージだ。
「いや、慣れない飛行機に
少し酔ってしまったみたいで」
俺は額に手を当てて誤魔化した。
すると心臓の鼓動が少し治まった。
そうだ、この女は妻ではない。
いくら似ていようが、ただの仕事相手だ。
俺は仕事をしなければならない。
そうしなければ
永遠に妻の元へ行くことが出来ない。
自分に言い聞かせるように
頭の中でいつもの言葉が反響し
頭痛がするほど響き渡っていった。
?
俺とヨミージは翌日、劇場へ行った。
舞台装置の搬入口を確認し
照明の吊り位置を測り
劇場側と契約の確認をする。
交渉はヨミージがすべて通訳した。
「劇場側は追加料金を請求しています」
「契約書では?」
「含まれています」
ヨミージがタイ語で話す。相手が反論する。
「当初の契約には貴社も納得していました。
実入りが多くなったから報酬を寄こせ
というのは反社会的なやり口です。
この条件で呑んでいただけないのでしたら
当社としても裁判を
視野に入れる必要性が…」
ヨミージは振り向いて微笑んだ。
「大丈夫です。向こうが折れそうです」
夕方には問題は片付いた。
俺とヨミージは初めてとは思えない程
バディとしての相性がよかった。
そこには確かな意思の共鳴があった。
それは、とてもとても懐かしい感覚だった。
…いや
余計な感傷に浸り込むのは止めよう。
ともかく
これで出張のお役目は終わったのだ。
?
その夜。ヨミージが言った。
「近くでショーをやっています。
観に行きますか?」
屈託のない笑顔だった。
重ねてはいけない想いが去来しそうになる。
俺はそれを振り払うように
できるだけ明るい声を振り絞った。
「いいね。
せっかく仕事が早く終わったんだ。
是非、行こう」。
するとヨミージは
嬉しそうに駆け寄って俺の手を取り
蒸し暑さが地面に残る
タイの街路を歩き出した。
?
ヨミージに導かれ
着いたのは小さな劇場だった。
劇場といっても
東京で見慣れたような建物じゃない。
古い倉庫を改装したような空間で
入口の横には
小さなカフェが併設されている。
扉を開けると、湿った夜気と
コーヒーの匂いが混ざって流れ込んできた。
客席は五十ほど。
黒い椅子がぎゅうぎゅうに並べられている。
舞台は客席より一段高いだけで
境界はほとんどない。
「ここ、私の好きな劇場です」
ヨミージが小声で囁いた。
まだ開演していないのだから
ヒソヒソする必要はないのに。
しかし、久方ぶりに感じる
その妻らしい気遣いを
とても懐かしく思った。
…やめろ。
思い違いをするな。調子に乗るな。
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照明が落ちる。暗闇の中で、役者が一人
舞台の中央に現れた。
男と女の物語だった。
遠い昔、同じ村で育った二人が恋に落ちる。
だが戦争が始まり
男は兵士として連れ去られる。
女は待ち続ける。
何年も。何年も。
やがて男は帰ってくる。
だがその彼は、もはや別人のようだった。
「俺はもう
とうに昔の俺じゃなくなってしまった」
女は微笑む。
「それでもいい」その台詞を聞いて
胸の奥で何かが軋んだ。
俺は昔、同じような台詞を
舞台で言ったことがある。
相手役は、妻。逢坂命だった。
照明が変わる。
二人は抱き合う。
しかし次の場面で、男は死ぬ。
彼は、戦争で受けた傷に
ゆっくり蝕まれていた。
女はその亡骸を抱きしめる。
悲しげに。愛しげに。
そして呟いた。
「あなたはどこへも行ってはいない」
客席は水を打ったように静まり返っていた。
俺は舞台を見ていた。
いや、見ていなかった。
目の前の役者に、別の顔が重なっていた。
逢坂命。
舞台の灯りの中で
彼女があの日のように笑っている。
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?アカリ?
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