
最近また『三国志』を読み返している。
読むたびに引かれる人物が変わるのがおもしろい。
前は諸葛亮の天才っぷりにばかり目がいっていたけれど、今日はなぜか劉備のことをずっと考えていた。
彼は武にも長けず、策においては諸葛亮や曹操に劣り、どちらかといえば「人に慕われる力」にすべてを賭けていた人だった。
それって一歩間違えれば、ただの優柔不断にも見える。
なぜか彼の姿勢には、真似できない強さがある。
「人を得ること、これ天下を得るの本なり」
そんな信念が、敗れても敗れても立ち上がらせたのだと思う。
勝つための戦いより、負けながらでも信じ抜く姿勢の方が、年を重ねるほど胸に響いてくる。
劉備のように、何かを信じて持ち続ける強さ。
その不器用さごと、人としての深みになるのだろう。
本を閉じて窓を開けると、ほんのり春のにおいがした。
いまの時代にも、三国志は静かに息をしている。